フランス語の単語はたくさん英語に取り入れられています。歴史的にはフランス語から英語に入ったのですが、英単語を知っている人は 英語を使ってフランス語の語彙を増やすとかなり効率的です。歴史の逆をたどるわけです。
もしも英単語を1万5千語知っているとすると、 その人はすでにフランス語の単語を6千語から7千語を類推できることになります。仏語と英語の類似性が高いのでフランス語を習ったことが なくても少しの努力でフランス語の語彙が手に入ります。
僕は英語の単語帳は作りませんでしたが、単語表を活用していました。つまりExcel表を1990年代から使って英語の語彙を増やしてきました。 この表にタイプした英単語は発音と語源から覚えるようにしていました。Excel表にしておくと、同じ語源から派生した単語が検索できます。 Excel表に語源と発音を記入してスペルミスをチェックしている間にほぼ覚えてしまいます。何度も発音することも単語の記憶を助けます。 この経験から『単語耳』という本を作りました。英単語8000語を発音から覚えて、語源で整理する手法を使っています。
今回は英語でやってきたこの方法をフランス語でも使って、たくさんの単語をいっきに覚える計画です。今回作ったExcel表はこれです→ 僕の「仏語単語表」です。
語源の知識があると同じ語源から派生した仏語と英語の単語を並べることができます。お遊びとしてラテン語のVenire(来る)という単語を語源に持つ
フランス語と英語を並べてみました。僕は昔「語源辞典」という語源で分類した語彙約1万語の辞書を作ったことがあります。
このデーターベースを使うと下のような表が作れます。
ラテン語Venire(来る)から派生した英単語と仏単語は90%が(ほぼ)同じ!
下の表はラテン語Venire(来る)という単語から派生した44個の英単語と仏単語の比較です。ラテン語を語源とする英単語は、 一つのラテン語から100個も派生したものもあれば、50個派生したものもあります。20個派生したものや、5個以下しか 派生していない単語もあります。派生した英単語が多い順にラテン語をランキングすることができます。僕の著書『単語耳』第3巻Lv3では、 派生語の多いラテン語TOP30を選択してそこから派生した英単語を一網打尽に覚えることが出来ます。Venireは『単語耳Lv3』 では頻度別TOP23位の単語です。
下の表の44個の英単語のうち仏単語にも同じ意味の単語があるものは40単語以上あります。実に90%以上(40÷44=0.91)が英語に ペアに対応した仏語の単語が存在するということです。もちろん発音が異なりスペルが微妙に違いますが英単語を知っていれば それとペアになっている仏単語の習得は容易です。僕がすべきことは発音できるようにして、多読でこれらの単語にたくさ ん出会うことです。(まだ学習途上なので、下の表にはミスがあるかもしれません。悪しからず)
English | French | Meanings | |
1 2 3 4 5 |
advent adventitious adventive adventure adventurer |
Avent,
avènement adventice adventice? aventure aventurier、ere |
出現(神の)、到来 (要素などが)付随的な、偶発的な (動植物などが外来の 冒険、投機 冒険家 ad=to |
6 7 8 9 10 |
adventurous avenue circumvent contravene contravention |
aventureux、euse avenue circonvenir contrevenir contrevenant |
冒険的な、大胆な ad=to 並木道、大通り a(d)=to(・・に来る道) ・・・を迂回する、(法の)抜け道を見つける (法などを)犯す、に違反する 違反、(主義などの)矛盾 |
11 12 13 14 15 |
convene convenience inconvenience convenient inconvenient |
convoquer convenance都合、礼儀 inconvénient convenable適切な inconvénient |
招集する、集まる con=(共に) 便利 con=together(共に集まれば何かと便利) 不便、不都合 便利な、都合の良い con=together 不便な、不自由な |
16 17 18 19 20 |
convent convention conventional covenant event |
couvent, convent convention conventionnel、le convention événement |
尼僧院 con=together集まっている 集会、招集、会合、協定 con=together 会合の、慣例の、型にはまった、月並みな 契約、盟約 出来事、事件e(x)=out(起こり来るもの) |
21 22 23 24 25 |
eventful eventual eventually eventuate intervene |
éventuel éventuel、le éventuellement 該当なし? intervenir |
できごとの多い 最終的には、来るべき、将来起こるべき 結局は、いつかは ・・の結果になる、結局・・・に終わる 干渉する、調停する inter=between間に |
26 27 28 29 30 |
intervention invent inventor invention inventive |
intervention inventer inventeur、trice invention inventif, ive |
干渉、介入、調停 inter=間に 発明するin=on、 出くわす、行き当たる(思い付く) 発明家 in=on 発明in=on 発明の才のある in=on |
31 32 33 34 35 |
inventory prevent prevention preventive provenance |
inventaire prévenir prévention préventif, ive provenance |
財産目録、棚卸し資産 妨げる、未然に防ぐ pre=before(事)前に 予防、妨害、阻止 pre=前に 予防的 pre=前に 起源、出所 L.pro=forth |
36 37 38 39 40 |
revenant revenue souvenir subvene subvention |
revenantante revenu souvenir subvenir subvention |
再来者、(現世を訪れた)霊魂、幽霊 歳入、収入源 re=backもとに(戻る金) 土産、記念品 sou-=sub-=under心に近く来る 救済にあらわれる、助け船を出す L.sub=under 救済、援助、(政府の)補助金 |
41 42 43 44 |
supervene supervention venture venue |
survenir突発する survenir aventure venue来る事、到着 |
付随して起こる、続発する、併発する 付随、続発、併発 冒険、adventureからadが落ちた 裁判地(陪審裁判の) |
フランスとイギリスは歴史を見ると仲が悪かったのですね。特に11世紀から14世紀のおよそ300年間はフランスがイギリスを支配していました。 イギリスがフランスを嫌いになったこともうなづけます。使われていた言葉も、300年も支配されていればイギリスでも フランス語がはびこり、英語が隅に追いやられることになります。でも11世紀から14世紀にかけてフランス語が英語に 取り入れられたという単純なことではなさそうです。フランス語が英語に取り入れられるのは14世紀の後半以降だと思われます。 歴史の皮肉ですね。フランスのイギリス支配から解放される時期が来てからからフランス語が英語にどんどん取り入れられたのです。
イギリス英語の語彙は、11世紀には数万語あったと思われます。しかし、300年もの間フランスに支配された結果、 英語はイギリス社会の隅に追いやられてかなりの語彙が消失しました。14世紀の後半には数千語にまで減って しまったようです。現在の英語の辞書では生き残った数千語の語彙はOld English(略してOE)の語源に分類されています。OEがもともとの英語を語源とする英単語です。英語の辞書で 語彙が10万語あったとすると、もともとの英語OEの語彙がたったの数千語です。9万語以上が14世紀の英語から見ると外来語なのです。
なので、仏語と英語が共通に使っている語彙は、綴りが多少違っても意味が似ている単語を数えると、 10万語の英和辞書があればそのうちの5万語から6万語にはなると僕は考えています。
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