NICHOLAS WADE

2008/5/23

Before the Dawn

Copyright 2006
* * * * * * * 2008/3月末読了
おすすめ度★★★★★

感想:

本屋で衝動買いしたの が、日本語訳の『5万年前』(イースト・プレス)でした。「あなたの祖先は、5万年前にアフリカ大陸を脱出した150人あまりの集団の中にいた。」という本の帯につられて買いました。

地球上に現代暮らしている人類は、地球上の複数の場所で発生したのか、1箇所で発生して地球上に広まったのか?この答えを求める人類史は、100年間議論のまとでしたが、2003年のヒトゲノムの解明(完全マッピング)により、1箇所で発生して、世界に広まったという説で決着しました。世界中の人のDNAのサンプルをとり、その鑑定結果から、過去5万年以上 にさかのぼった、DNAによる人類のファミリー・ツリーが作られたのです。この本も、1箇所で発生した現代人がどのように世界に広まったのかがメインのテーマです。その過程で、人類が言語をふくめてどのようにスキルを身につけてきたのかを考察しています。

現代人が地球上に広まって行った過去の5万年をテーマにした本は、Out of Eden (Stephen Oppenheimer)と、このBefore the Dawnの2冊があります。日本語で、Before the Dawnを読んだ後に、Out of Edenを読みました。Out of Edenのほうが淡々と、事実に基づいて現代人がアフリカから全世界に広まって行った様子について書かれています。まだ100%は信じないほうが良いと思いますが、説得力があります。

Before the Dawn著者のニコラス・ウェイドはイギリス生まれの科学ジャーナリスト。『ネイチャー』『サイエンス』の科学記者、『ニューヨークタイムズ』の編集者を経て、現在はその『サイエンス・タイムズ』に寄稿。

読者にアピールする編集を前面に出し、仮説をうらづけることを試みようとしています。やや飛躍があるかもしれませんが、知的な刺激が多く、わたしは、こちらのほうが好みです。

 

人類が生活の記録として残した物は、考古学の世界では5000年前までさかのぼることができます。どうくつの絵画などです。ヒトゲノムの記録には5万年前の痕跡が残っているそうです。

人類の言語の歴史について第10章におもしろい記述がありました。

第10章 Language

Figure 10.2に言語のファミリー・ツリーがあります。この説では、今から8700年前にインド・ヨーロッパ語族の親言語からインドヨーロッパ語族を含むいくつかの言語族に分かれたといっています。インド・ヨーロッパ語族の言語は、ヨーロッパ、バルト海地方に広く分布しています。

従来の言語の歴史では、インド・ヨーロッパ語族に親の言語があって、それを印欧祖語(proto-Indo-European)というそうです。印欧祖語からインド・インド・ヨーロッパ語族などに分かれたのは約5000年前だとされていました。著者のNicholasの話(説を言っているのは、Russell D. Gray* (the University of Auckland in New Zealand))では、それよりも、3700年も前だということになります。

(聖書にあるバベルの塔は、実際にあったのです。しかし、事実は、バベルの塔では短時間に多くの言語に分かれましたが、現実は、1000年以上の時間をかけて分かれて行ったのです。)

(人類の言語で、文法を持ったのはいつでしょうか。この本にはその答えはありませんでした。少なくとも8700年前には、文法を持った言語がありました。当時の言語は、スピーキングとリスニングで行われていました。文字で書き始めたのが約5000年前だとされているからです。)

(著者は、5万年前にアフリカを出発した150人の集団は、言語を使っていたと言っています。言語によるコミュニケーションが優れていたために、体力にすぐれていた、ネアンデルタール人を淘汰することが出来たという説です。)

 

感想!!

「Before the Dawn」または「Out of Eden (Stephen Oppenheimer)」のどちらかを暇なときや 、人生に絶望したときに読むことをオススメします。 政治家にも読んでほしいと思います。人類はもとは一緒だったのです。人類は1万年以上前の大氷河期をやっとの思いで生き延びてきたのです。この世から、戦争による殺し合いを一刻も早く無くしましょう。自分に受け継がれたDNAを大切にして、人生を最大限に生きましょう。

 

Russell D. Gray*の論文をネットで見つけました。

Russell D. Gray, Quentin D. Atkinson - 2003 - Language-tree ...

@article{gray03languageTreeDivergence, author={Russell D. Gray and Quentin D. Atkinson}, title={Language-tree divergence times support the Anatolian theory of Indo-European origin}, journal={Nature}, year={2003}, month={November},

Abstract

Languages, like genes, provide vital clues about human history. The origin of the Indo-European language family is ``the most intensively studied, yet still most recalcitrant, problem of historical linguistics''. Numerous genetic studies of Indo-European origins have also produced inconclusive results. Here we analyse linguistic data using computational methods derived from evolutionary biology. We test two theories of Indo-European origin: the 'Kurgan expansion' and the 'Anatolian farming' hypotheses. The Kurgan theory centres on possible archaeological evidence for an expansion into Europe and the Near East by Kurgan horsemen beginning in the sixth millennium BP. In contrast, the Anatolian theory claims that Indo-European languages expanded with the spread of agriculture from Anatolia around 8,000-9,500 years BP. In striking agreement with the Anatolian hypothesis, our analysis of a matrix of 87 languages with 2,449 lexical items produced an estimated age range for the initial Indo-European divergence of between 7,800 and 9,800 years BP. These results were robust to changes in coding procedures, calibration points, rooting of the trees and priors in the bayesian analysis.