THORMAS H. COOK

2006/6/16

* * * * * * *Copyright 2004
Into the Web
* * * * * * *
おすすめ度★★★★★  2006/6/16 読了

"No other suspense writer takes readers as deeply into the heart of darkness as Thomas H. Cook."
のように表紙の上部に案内があります。

 

ストーリー

主人公は、一人称の I で登場する Roy Slaterです。Royは25年ぶりに故郷の Kingdom County,
West Verginiaを訪れます。父が死に至る病であることを知り、最後の面倒を見るためです。

Royは25年前に Kingdom Countyを抜け出し、大学に行き、Californiaに住んで以来
故郷に帰ることはありませんでした。Royが大学に出発する数日前に事件が起こりました。
弟の Archieが、ガールフレンドのGloria Kelloggと駆け落ちしようとして、Gloriaの家で
両親を射殺してしまうのです。さらに、Jailに入れられたArchieは首をつって自殺
してしまったのです。

Royと父は仲たがいしていたので、ギクシャクした毎日を過ごしていますが、
物語の後半で父がWaylordの炭鉱で働いていたときの事件が明らかに
なり、父がSheriff のWallace Porterfieldに対して持っている憎悪のことを
知ります。

Royは故郷を出る前まで付き合っていた、Lila Cutlerからもやがて疎遠に
され、独身のままで故郷に帰ってきたのです。



感想:
Into the Webというタイトルからインターネットを連想しましたが、関係ありませんでした。
25年前の貧乏な田舎町に張り巡らされたSheriffの Porterfieldの支配をWebと表したの
だと思われます。そのWebのなかにRoyも父もはまっていた。その過去の謎が明らかに
なっていく物語です。

物語の全体は不幸なSlater家族のことですが、最後は、ほんの少しだけハッピー
エンディングな気持ちになれました。

主人公のRoyから見た父親像がちょうど良い長さのストーリーで描かれています。
25年前は、弟が殺人事件を起こした不幸な家庭を飛び出したRoyが25年ぶりに故郷に帰って当時は幸福な結婚生活にしようと努力していないように見えた無愛想な父親の面倒を見に一緒に二人で暮らす場面が上手に描かれています。

Royには頼らずに最後を迎えようとしている父親の過去がだんだん分かってきます。

英文を読んでいて、締りがあって、暖かい英単語の使い方がされていることを感じました。Sidney Sheldonを読んだ後なので、Sidneyの英文にきりっとした締りがないように感じました。英文と言うよりも、物語の進め方や、感情表現なのですが。

作者の組み立てたストーリーに上手にはめられました。そのことが心地よい作品でした。

 

* * * * * * *Copyright 2002
The Interrogation
* * * * * * *
おすすめ度★★★★★  2005/2/25 読了

ストーリー

2人の刑事による尋問(Interrogation)がテーマ。
主人公は、Detective Norman CohenとJack Pierceのコンビです。

●出だしの数ページは1941年の秋。
NormanとJackのコンビがあざやかに犯人に尋問室で犯行を自白させます。
映画でも良く使われる、主人公の能力を読者に印象付ける手法です。

●本編は1952年の秋。現代ではありません。
8歳の少女Cathy Lakeが公園(City Park)で絞殺され、現場近くの
土管に寝泊りしていたホームレスのAlbert Jay Smalls(比較的若い)が
容疑者として11日前の事件があった翌日に拘束されます。証拠や
自白が無い限り12日目で、無罪放免になります。それが9/13日。
話は、6:00P.M.., September 12から始まります。明朝の6:00A.M.には
Smallsを放免する期限です。

ちょうど、大ヒットしたドラマ 24 Twenty Four Hoursのように、尋問
の時間と、その11日前の9/1の事件当日の様子が入れ替わり出てきます。

6:12 P.M., Office of the Chief of Detectives, 227 Madison Street
のように小見出しが続くので、読んでいて迷子になることはありません。

7:17 P.M., Interrogation Room 3
まで現在の時間が進んだところで、


8:37P.M., September 1, City Park, Drainage Pipe 4
の小見出しで事件当日に行きます。これ以降は9/1日と9/12を
行ったりきたりします。

話が進むにつれてPierceは娘が殺害され、妻に先立たれている
ことなど、取調べ側の人々の人生模様が描かれてゆきます。

Smallsも引きこもりだった過去がだんだん明らかになって行く。
はたして、Smallsが犯人なのか?自供を導き出すことが出来るのか。
別の犯人がいるのか?

尋問の会話と、事件当日の事件後の様子、そして途中でPierceが
調査のために外出する先の場面が入れ替わります。



感想:
前作のChatham School Affairが文学的な作品だったのとはガラッと
趣が変わっています。殺人事件を追う刑事物です。
尋問がメインテーマなので、会話の多い作品で、とても読みやすいと
感じました。場面も小見出しで明確なので、ストーリーも追いやすく、
いっきに読まされました。

残り時間がだんだんなくなってくるなかで、はたしてSmallsを自白させる
ことができるのか、所々にでてくる登場人物との関係はどうなって
いるのだと読者を考えさせながら、最後にばたばたとつながりが
明らかになって行きます。結末は以外な展開になるので、最後に
楽しみが待っています。といってもハッピーエンディングではありません。
引きこもりのSmallsを筆頭に、それぞれ心に暗い部分を持った登場人物により全体に暗い雰囲気だと感じる人が多いと思います。それだけ心の部分を上手に描写できているのです。

よく出来ているのと読みやすいので、お勧めします。

 

* * * * * * *Copyright 1996
The Chatham School Affair
* * * * * * *
おすすめ度★★★★★  2005/2/9読了

ストーリー

主人公の私の名前は、Henry Griswald、現在の私が、1926年のマサチューセッツ州のケープコッドの小さな静かな町の私立校Chatham SchoolにおこったAffair(恋愛事件)を語り始めます。

当時は厳格な父が校長をしていました、私は生徒でした。父の友人が亡くなりその美しい成人した娘のElizabeth Rockbridge Channingを美術の教師としてアフリカから受け入れられます。

Miss Channingの父親の書いた本を譲り受けて読んだHenryは著者がヨーロッパを娘を連れて転々と移動し、自由奔放な心の持ち主であることを知ります。この本とMiss Cahnninigから、小さな町Chathamと父親に敷こうとしているレイルに反発を始めます。

Miss Channingと妻子持ちの男性教師であるLeland Reedが惹かれあっていることを知り、HenryはLelandが建造しているヨットの製作を手伝い始めます。

ところどころに、Miss Channingが学期末に裁判で尋問を受けているような事が挿入されてくるので、恋がらみで何か事件があったようです。静かに話は進んでゆく、心理的なサスペンスです。


感想:

Psychological thriller作家といわれているCookのようですが、この作品には読みはじめから文学作品を感じました。1926年の描写が進む間に、時々裁判でMiss Channingが裁かれているところが断片的に入るので、最後にどうなるのだろうと期待しながら最後まで読みました。文章がきれいなので、ストーリーによらなくても楽しめました。

 びっくりするような、からくりや複雑な事件は無いのですが、結局ストーリーも楽しみました。事件が終わったあとの最後まで描写は詩的です。

 最近Graded Readersを何冊か読んだ後なので、この作品を楽しんで味わうところまで読解力を付けるにはどうしたらよいのか?などとも考えてしまいました。Graded Readersとは語彙を1000語とか2000語に限定して、言葉の堪能さのレベルに合わせて、物語を楽しめるようにしたものです。もともとはイギリスやアメリカの子供向けに書かれた物ですが、Graded Readersのために特別に少ない語彙で最大の表現が出来る作家が書いているので、面白いものは夢中にさせてくれます。

 この物語りを追いかけることは、3000語ぐらいの語彙を習得していれば出来ると思いますが、言葉のあやを鑑賞し、じっくり味わうためには、20冊や30冊のペーパーバックの読破経験が必要だと思われます。ここのところをどうやって人に伝えて行くべきなのかも、私の課題の一つだと思いました。

 

* * * * * * *Copyright 1998
Places in the Dark
* * * * * * *
おすすめ度★★★★★

「Some of the most savage, disturbing tales in American fiction」とあったのでとても暗いストーリーを想像していましたが、仲の良い兄弟とその住む町に訪れたDoraというミステリアスな女性の心理を上手に描いた物語です。会話のたくみな作家ですね。一言への相手の反応を目の瞬間的な表情の変化を書くことで、映画を見るよりもするどく読者に伝えてきます。そこが楽しめるところです。

物語は、1937年のMaine州のPort Almaという小さな町。そこにGreen-eyed beauty, Dora Marchがたどり着き、数ヶ月住んだ後に町を去ります。私Cal Chaseが主人公。弟のBillyは父の小さな新聞社の経営を受け継いでいます。そこにDoraを雇い入れ、いつしか恋に落ちます。母とBillyは情熱的なロマンチスト。ほとんど持ち物が無いDoraはきわめて質素な生活をしています。彼女はとてもfragileでsensitive。むかし起こった親子殺害された悲惨な事件にDoraがかかわっていたことが分かってきます。

Billyが台所のナイフで殺され、Doraは町を去ります。私はDoraを探してその暗い過去に直面します。Doraを探す旅と、Doraが町に来てからの様子が時間的に前後しながら表現されてゆきます。その間に私もDoraに一瞬で恋に落ちる心理描写がたくみです。

感想
一気に読めました。といっても毎日のこま切れの時間しか読めなかったのですが。パトリシア・コーンウェルのIsle of Dogに極めて時間がかかったので、ある程度スピード感を持って読まないと、面白いはずのストーリーがつまらなく感じられるのかもしれないというその反省からできるだけ一気に読みました。題材は悲惨な殺人事件とそのショックで人格が変わってしまった女性の物語ですが、私は暗いとは思わずに読みました。むしろ最後に主人公が経験したことにより、やさしく両親を介護、看取り、新聞社をついでゆく、ちょっとハッピーエンドと勝手に解釈しました。

 

* * * * * * *Copyright 1998
Instruments of Night
* * * * * * *
おすすめ度★★★★★

Thomas H. Cookのこの作品は私にとって2冊目です。
Paperbackの表紙の上に
"A ONCE-IN-A-LIFETIME MASTERPIECE" KIRKUS REVIEWS
とあります。ということは、彼の本の現在Bestなものというふうに考えられるので
期待して読みました。

あらすじ
主人公はPaul Graves。あまり売れていないミステリー作家。
或る夏、Miss Daviesに招かれてRiverwoodを訪れます。ここはHudson River valleyにあります。Davies家は 毎夏、ここの自宅のcottageに知識人を招いています。

この夏招かれたのはPaulと画家のEleanorのたった2人だけ。Paulは招待主のMiss Daviesに特別な要求を受け、そのためにやってきます。その任務は50年前に起こったMiss Daviesの親友で当時10代で殺害された Faye Harrisonの殺人犯を探すことです。

Paulはなぜ自分が選ばれたのか不思議ですが、彼が書いている探偵シリーズがMiss Daviesに認められ、 真犯人がわからなくても、それらしきストーリーを書いてFayeの母親のMrs. Harrison(もうあまり 余命が無い)に殺人の真実を伝えたいと念じたからです。

実はPaulの姉も首を絞められて殺されています。Paulが思い出したくない姉の殺害事件と首を絞められて 50年前に殺されたFayeのことが重なってきます。


感想
CookはPsychological thriller作家だとあります。この作品はとても読みやすいのが特徴と感じました。 文章を書く力と、ストーリーの良さが重なったために読みやすいと感じさせるのでしょう。絶対に他の 作品ももっと読みたくなりました。

Paulがずっと人と接することなく、他人に話さなかったことが次第に明らかにされてゆきます。 心を開かせるのにEleanorが重要な役割を演じます。ストーリーは最後の1/4近くになってどんどん 展開してゆきます。読み手を決して急かせることはありませんが確かにページターナーの面白さで 読ませられます。最後の最後でハッピーエンドになります。わたしは、そう解釈しましたが、読む人によっては壮大な悲劇と思えるかもしれません。

Breakheart Hillもそうでしたが、どちらかというと全体にこころが憂鬱というか暗くなる話の 展開ですが、それでいて希望を持たせるようです。

 

* * * * * * *Copyright 1995
Breakheart Hill
* * * * * * *
おすすめ度★★★★★

Thomas H. Cookの本を読むのはこのBreakheart Hilllがはじめてですがもっと もっと読みたい作家にまためぐり合いました。

裏表紙には、This is the darkest story that I ever heard.とあるので、「読み終わって、暗い気持ちになったらどうしよう。」と思いながら最後まで読みました。

ストーリーは、はじめに1962年の事件が紹介され、30年後の今と過去を行ったりきたりします。 はじめは静かに話が進み、最後は読むのが止まらなくなりました。最後に意外な展開があります。 絶対に結末はバラシテはいけない作品なのでここには書きません。

主人公はI(私)であるBenです。ストーリー全体のの80%は高校時代の私で、残りの20%が30年後の 現在という構成です。場所はChocktawというAlabamaの小さな町で、そばにBreakhert Hillという丘があります。

ヒロインの名前はKelliです。私と一緒に学校の校内新聞を作っていました。KelliはBreakheart Hillで何者かに襲われます。

最後まで犯人がわからずに話しが進みます。そして最後に大きなどんでん返しがあります。