Stephen King

 

Kingは十数年前、いちばん初めにPet Cemeteryを読んでしまったので、このときのショックがずーっと尾を 引いていました。(気持ちの悪いホラー作家との印象を持ってしまいました。) ずっと読んでいなかったのですが、アメリカ人のリンギストの友人に進められて、読み始めました。

 

* * * * * * *Copyright April 14, 2001作品
black house
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おすすめ度★★★★★

現実の世界と、King得意の別の世界の話です。前半は現実の世界が中心です。 3人の子供が誘拐され、殺害されます。体の一部が獣に食べられたような現場の状況です。Jack Sawyerは自称31歳でリタイアした捜査官ですが、現地の警察に請われて捜査に参加します。犯人は Fishermanというあだ名が分かっているだけで、地元の人々から恐れられています。

この作品は、 Peter Straubとの共著です。Peterとは誰なのかわからずに読みました。

4人目で行方不明になったのは、 10歳のTy Marshallです。事件の場所はWisconsin州のFrench Landingという小さな町です。

前半は現実の世界なので、普通の推理小説のつもりで読み続けましたが、ところどころつじつまが 合いません。後半になると全体がつながってわかる構成になっています。この構成のよさが、多くの 読者に支持されるのでしょう。

Black HouseはFrench Landingの町外れの森の中に忘れられていた黒く塗られた家です。ここが異界への 入り口になっていて、ストーリーの最後の方ではTyの救出のために、Jackと他の3人がここから 入ってゆきます。

異界の説明には、Dark TowerとかMid-Worldという言葉が出てきます。Dark Towerの読者へのサービスなのか、Kingの こだわりなのか。Kingの異界のイメージがつながっているのでしょう。Roland(Gunslinger) という名前も出てきますが、Black Houseで実際に登場して、少し活躍するのはSpeedyというあだなのParkusです。Parkusは Gunslingerの子孫でしょう、Gunmanのようです。

現実を離れた話はいやだという読者も 含めてお薦めします。ストーリーがしっかりしていますが、何よりも英語の使い方がうまく、 映画にできないくらいの情景が描写されます。すこし難しい単語も出てきますが。文字から イメージを組み立てる良い練習ができると思います。

 

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"Dreamcatcher "     May 29, 2000作品
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おすすめ度 ★★★★★

心理戦争を読んでいるようで、想像力を知らず知らずのうちに 働かされてしまいました。物語は、X-File的なものです。親友4人と、ダウン症(Down's-syndrome) のDudditsと宇宙人の戦いです。というと誤解されてしまいますが、もっと心理的なテレパシーの 要素が入ってきます。The Standは共通の夢を見る人々の物語ですが、発想が似ているとも考えられます。

Bag of Bones以来の本格的な(ホラー系の)作品だそうです。こわいというよりも、テレパシーを 文章であらわしています。これは映画化が困難でしょう。

学生時代からの友達の4人Beav, Henry, Pete and Jonesyが主人公です。彼らは、知恵遅れのDudditsを学生のころにいじめっ子から 助けて以来、親交があります。

事件は4人が毎年ハンティングに行った山奥で発生します。 Dudittsを助けてから25年後です。

私の読んだ本の表紙には、雪の森林、川、道路、子供4人が 窓からのぞいているところ、男性が一人いすに座っているところ、女性の写真などがあります。 それぞれが意味を持っているのですが、ねたはばらさないようにしましょう。

とても長い 物語ですが、中だるみせずに読みました。アメリカ人はThe Standをとても良いといいます。わたしはThe Standを読んでいませんが、Dreamcatcherを読んだ あとでは、なんとなく彼らの評価がわかる気がしました。

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"Bag of Bones"    Copyright 1998
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おすすめ度 ★★★★★
これは、十分楽しめました。後半に死人の霊(Sara Laughsの怨念)がちょっと出てくるのですが、それでも気持ち悪いところは無く、 それよりも物語の面白さに引きこまれました。読み始めたら止まらない部類です。

4年前に妻に先立たれた 40歳のベストセラー作家の Mike Noonanは、ちょうど Kingの自画像のように描かれています。 妻に死なれてから、何も書けなくなり スランプにあった作家が、湖にある別荘に行き遭遇することを物語にして有ります。
 
映画を見るように描写がわかりやすいのでイッキに読めます。もう一度読みたい本に、 メンタルチェックを入れました。

亡くなった妻への限りなく深い愛は、Message in a bottle の主人公が亡くなった妻にLetterを出す気持ち を連想させてくれました。 Man’s search for meaningにも、自分がアウシュビッツの絶望に耐えることができたのは、 妻のイメージと想像上の会話をして、生きる気力がなくなることに耐えたとあります。 偶然最近読んだ3冊の本で人生に欠かせない共通の愛についての記述にぶつかりました。
 


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The Dark Tower IV Wizard and Glass Copyright 1997
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主人公のRoland(Gunslinger)が先生であるCortを破りGileadへの旅に出るところまでが1970年に 書かれ、26年後の 1996年にそれから16時間後のこの物語が書かれたと、作者が コメントしています。

Blaineという汽車のようなコンピュータとのRiddle勝負(負けるとBlaineに殺される。) にはじまり、遠くを見とおせる水晶玉にとりつかれた魔女がでてきたり、というファン タジーの世界の物語です。Glassはこの水晶玉からきているようです。ホラー・フィクション的で なく、気持ち悪くないだろうと思い読んでみました。
私には、話しについてゆくのがやっとで、十分楽しめるところまでは行きませんでしたが。 前作とかStephen Kingを私自身がほとんど読んでいないからだと思います。

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The Green Miles Copyright 1996
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おすすめ度 ★★★★★
夢中になって楽しめました。後半は、読むのが止まらなくなりました。

これは、アメリカの監獄のお話です。The Green Mileとは、死刑執行のときに 電気椅子の所につながる廊下のカーペットの色がGreenだから、この廊下をGreen Mile と呼んでいます。主人公の私(Paul Edgecombe)は、死刑囚の独房の看守兼死刑執行人です。

設定は、あまり気持ちの良いものではありませんが、話しは人間味があり女性でも 誰にでもおすすめできます。話しの進め方は、養老院に入っている私が過去1932年の 出来事をちょうど書き終わったという設定です。1932年度のことが中心に書かれています。
最後は現在に戻ります。養老院に入っている私が過去を語るストーリーは、
Nicholas SparksのNotebookに似ていますね。

双子の少女殺しの犯人John Coffeyは巨大な知恵遅れの黒人です、PaulはCoffeyが 不思議なヒーリングの力を持っていることに気づきます。そして本当は殺人を犯しては いないと考えるようになります。

Paulは仲間と一緒に、Coffeyを監獄の外に連れ出し、上司の妻の脳腫瘍を直そうと大冒険をします。

トムハンクスがPaul Edgecombeの役で映画化されています。

 

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The girl who loved Tom Gordon  Copyright 1999
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おすすめ度 ★★★★★

超おすすめの1冊です。シンプルな英語で書かれていて、ストーリーの展開からイッキに 読めてしまいます。Kingはページターナーとなる作品を目指していると言っていますが、 まさにページターナーの出来です。

Man’s search for meaningと似ていると、読んでいて感じました。体力と気力の限界に達する様子が 平易な英語で丁寧に記述されていて、まるで自分が森でさまよって、おなかが空き、顔じゅう 蚊に刺され、こわい夜になり、夜が明けて、みずの流れに沿って歩けど歩けど森の中。 また夜になり、だんだんと救出される希望もなくなっていくような錯覚に陥りました。

ストーリーはあまり公開しないほうが、読んで楽しいと思いますので最低限に とどめます。

9歳の女の子、Trisha McFarlandはお母さん とお兄さんと何でも無い週末のハイキングに出かけます。ちょっと用足しにハイキングコース から外れて、近道のつもりで入り込んだ森から迷ってしまい、元にも戻る方向もわからなくなり、 さまよい始めます。

場所は、New Hampshire州です。アメリカの 最も北東でカナダモントリオールの南400マイルぐらいのところです。このあたりは地図で見ると 広大な森林です。

結局9日間の迷走にイッキに付き合わされます。話の展開が良いので、先に先にと続けて 読まされてしまいます。9歳の女の子を支えたのは、彼女とお父さんの野球のヒーローの Tom Gordonです。お父さんがもらってくれた Tomのサインが「つば」にある帽子とラジオ 付きのSony Walkman。バッテリーが無くならないように、毎日Red Soxの野球放送だけを聞いて いました。

最後にTom Gordonのピッチング動作がTorishaを救います。このシーンは劇的なので、 私は大好きです。

スランプにある人は特に読まないと損する1冊ですよ。おなかが空いて死にそうな思いを したので、私達の身の回りの豊かさに改めて感謝の念が沸いてきました。

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Hearts in Atrantis Copyright 1999
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おすすめ度 ★★★★★

別のPaperbackでKingはHearts in Atlantisは何年も前から書き たかった自分の生い立ちに関するテーマだったと言ってたので、興味がありました。

主人公のBobby GarfieldがKingと同じ年だとすると、1960年に11歳なので私とほとんど 同年代です。物語は4つのストーリに分かれています。

P1-P323  1960年のBobby Garfieldが11歳の時の話。主人公の私はBobby。Carolが Girlfriend。このストーリーが全体の半分を占める。

P324-P525  Hearts in Atlantisというタイトルの章。主人公の私はPete。University of Maineの1966年を中心とした話。CarolがPeteのGirlfriendとして登場する。学生寮では 私も含めたグループがトランプのHeartsというゲームに明け暮れて、勉強がおろそかになり、 何人かは落第する様子が書かれている。Heartsはちょうど日本の学生のマージャンのように やみつきになるらしい。タイトルのHeartsは「心」という意味と、このトランプゲームの Heartsの両方をかけている。

P526-P589  Blind Willieというタイトルの1983年の物語。WillieはBlindのこじきに 扮して、かなり稼いでいる変な話。

P590-651  1999のWhy We're in Vietnamというタイトルの章。

P652-P672  1999 "Heavenly Shades of night are falling"というタイトル・

1960年に11歳だった主人公の時代の話なので、私にはどんぴしゃだったけど、
そうでない人たちは何を感じるのだろう。多分、読んで共感できるのは、2000年で40歳から 60歳位の人たちだと思われる。この物語が古典となった頃にはどの世代の人にも受け入れ られると思うが、はたしてそうなるかどうか。

60年代のアメリカのヒット曲が沢山出てきて、私にはいちいち懐かしく、歌詞だけでなく メロディーも浮かんでくるので、作者の言いたい事は手に取るように分かるけれど、Kingが 読者層をある程度無視して書きたい事を書いた作品。書きたい事を書いたので、ブレイクして どの層の年代にも広く受け入れられるかも知れないし。

そんなわけで、私としてはとっても堪能できたので、★5つ。