SIDNEY SHELDON

2006/9/5

Sidney Sheldonは沢山読んでいるのですが、書評はあまり書いてい ませんね。少しずつ書評を増やしてゆく予定です。ずっと昔に読んで忘れているものも多いので、読み直してゆこうと考えています。

 

The other side of me


* * * * * * *Copyright 2005
おすすめ度★★★★★  (2006/9/4読了。P428)
 

これは、Sidney Sheldonの自叙伝です。したがって、Fiction、つまり物語ではありません。

読んだ感想は、「最近Sidneyが書いた物語よりも面白い!」です。

1934年のアメリカが大不況のときに、彼は17歳で自殺を図ろうとします。シカゴの家があまりにも貧しくて、将来に夢も希望も描くことが出来なかったからです。

前半は、貧しいところから徐々にScreenwriterとして成功に至るまでの失敗の連続物語です。本の真ん中ほどに写真が15枚あります。著名な俳優などと一緒にとった写真ですが、その顔ぶれに驚きました。

Movie "Just This Once"のJanet Leigh, Peter Lawford

Movie "Dream Wife" Cary Grant, Deborah Ker

Sidneyの自宅で Frank Sinatra, Jules Stein

Movie "Easter parade" Fred Astaire, Judy Garland

Movie "Three Guys named Mike" Jane Wyman

Movie "Jumbo" Doris Day

Movie "You're never too young" Jerry Lewis

Movie "The Naked Face" Roger Moore この映画は昔見ました

Movie "West in Pardners" Dean Martin, Jerry Lewis

Movie "Buster Keaton Story" Buster Keaton

Kirk Douglasとの写真

彼の自叙伝『The other side of me』によると、Sidneyは若い頃は、劇場ミュージカルやScreenwriterで成功した作家だったのですね。これで、「ストーリーは上手だけど、なんで人物描写がうまくないんだろう?」という長年の疑問が解けました。映画の脚本と、俳優のせりふを書いていたので、人物の心理描写を書く必要が無かったのですね。心理描写は俳優がやっているのです から。彼の作品は、娯楽として単純にストーリーを楽しめば良いのです。それ以上のものは期待しないほうがよいでしょう。

 

The sky is falling


* * * * * * *Copyright 2000
おすすめ度★★★★★  (読了)


ストーリー:

主人公は、有名なTV局のニュース・アンカーのDana Evans。11:00pmからのニュースが担当。 サラエボで戦火に混じりながら正確なニュースを伝えたことで高く評価されています。

次のニュースシリーズに、迷宮入りになっているような事件をとりあげるという企画が あがっていました。Winthropsという名門の一家5人が1年のうちに別々のアクシデントで 全員が死亡しています。強盗に殺害されたという息子を知っていることもありDanaはTV局で 取り上げるに値する物があるのではないかと前もって調査を始めます。

フランス、イタリア、ロッキー、ロシアと一次調査に飛び回った範囲ではWinthropsは誰からも 好かれた聖人一家でした。ところが2度目に訪問したロシアの高官からとんだ秘密を明かされます。 この高官が殺害され、Danaも抹殺されようとします。今までコンタクトしてきて、頼りになると考えていた人々がことごとく敵であることが読者に明かされます。この辺のサスペンスは、 ケン・フォレットの昔のタッチを感じました。

感想:

シドニー・シェルダンの本で毎回感心するのは、シンプルな英語だけを使って、豊富な表現が 出来ている点です。今回も、まるで映画を見るように読破しました。英語の表現に安心して身を任せられる感じです。会話も、よく出来た映画のスクリプトのようにあたまに自然に音が響いてきます。気持ちよく読めるので、読み始めると止まらなくなります。

とてもストーリーが良く出来ているので、読んでいて最後に期待してしまいますが、とっても 良いのですが、やや平凡な終わり方です。

安心して読める、エンターティンメントとしてよく出来たストーリーと文章です。ベストセラー になっているのが納得できます。おすすめ。

The sky is fallingとはありえない事が起きているという意味だと思います。 ずっと昔は、空が東京ドームのように丸天井で出来ていると考えられていました。天井ならば、落ちてきても不思議ではありませんが。

 

 

Windmills of the God

 

* * * * * * *Copyright 1987
おすすめ度★★★★☆  2006/6/6(読了)
 

「Mater of the Game」と「If tomorrow comes」の2つの作品と比べると、以降のSheldonの物語は、どれもあまり面白くないと感じます。Windmills of the Godも、主人公の Maryが夫を亡くして苦労しますが、その表現が甘いところに不満を感じました。

実は約20年前に一度読んでいます。正確には1988年1月24日 に一度読み終えています。Paperbackが出た直後に読みました。この頃にたくさんPaperbackを読んだのですが、私のWEBサイトを作るはるか以前のことなので、読書感想にはありません。どうしてSidney Sheldonが無いの?と質問を受けます。もう一度読んだものを順次ここに掲載するつもりです。

ストーリー:

主人公は、女性のMary Ashley。大学で東ヨーロッパの政治学を教えていましたが、出版した本が大統領の目にとまり、ルーマニアの女性大使に選ばれます。 当時はまだベルリンの壁が崩壊する前です。ソビエトおよび東ヨーロッパと欧米諸国は冷戦状態にありました。新任の米国大統領Paul Ellisonは、東ヨーロッパ諸国がいだくアメリカのイメージを良くしようと考えて女性であるMaryをルーマニアに送り、イメージ・チェンジをしようと考えたからです。Maryは夫の医者の職業を続けてほしいために大使になることを断りますが、都合よく夫は交通事故で亡くなります。

ルーマニアの大使を引き受けたMaryは2人の子供と赴任します。ルーマニアで徐々に功績をあげはじめますが、Patriot of Freedomという組織から暗殺されようとします。最後のハイライトはいかにANGELという暗殺者の暗殺の手から逃れるか。ややはらはらとした展開が待っています。

感想:

シドニー・シェルダンのこの本は、1988年当時も、まあまあの出来だと思いながら読みましたが、多少の不満も感じていたと思います。2006年に読んでみると、1987年に書かれた本は、やや古い感覚で書かれていることを感じます。何処がどうということはないのですが。

Maryという女性が主人公です。比較的新しいシドニー・シェルダンの作品にも女性の主人公が出てきます。話の展開が途中でノラ・ロバーツの恋愛ものに似ているところがあるので、女性の心理描写をどうしても比較してしまいます。すると不満が感じられるのですね。娯楽と割り切って、ストーリーのシェルダンを楽しめれば良いのだと思います。

英語が読みやすいので、Paperbackを読むことに慣れようとしている人におすすめです。私は、英語を速読している状態を確かめながら読みました。話すスピードよりも速く読むように、そして文字を見ながら発音が頭の中で響くことを感じながら読むようにしました。

英単語はアルファベットの組み合わせです。アルファベットをひとつひとつ確認しながら単語を見ていても読む速度はあがりません。アルファベットをひとつひとつ入力しながら電子辞書を引くように単語を認識していると読む速度がものすごく遅いままです。文字を聞きながら読んでいるときには、音節ごとに音を聞いています。3つ4つのアルファベットの組み合わせがいきなり音になって頭の中で響きます。さらに、一つ一つの単語の音を聞いているのではなくて、かたまりで聞いています。

He looked into her eyes and said softly, "Coffee?"の場合はHe lookedの8個のアルファベットがいっぺんに目に飛び込んでかたまりとして音があたまのなかに響きます。漢字の熟語を見るようにHe lookedをパターン認識しています。into her eyesもパターン認識しています。スペースも数に入れると13個のアルファベットなのですが、いっぺんにパターン認識しています。

この状態を、人に伝えて、どうしたら早くこの状態が習得できるのかと考えたくて、この本を読んだわけですが。あまりにも瞬間的に起きていることなので、説明が難しいのかもしれません。慣れと予測も使っているのでしょうか、into her eyesはintoもherもeyesも単語としてはたくさん出会っています。スペルと発音もしっかりマッチングさせて脳に記憶されています。すると予測も働くようになって、into her eyesが一瞬にして認識されるのでしょう。この本を読んでいて、どの文章でもこの認識を使って高速で理解していることを感じました。日本語を介さないで理解するというレベルは、とうに通り越しています。なんでもかんでもかたまりで認識されます。

I was wrong.もひとかたまり。He told meもひとかたまり、to stay out of trouble.もひとかたまりで認識されます。シドニー・シェルダンが読みやすいのは、このひとかたまりの単語の組み合わせ方が、日常の会話で頻繁に使われている表現にしているからだと 分析できます。

 

 

If Tomorrow Comes


* * * * * * *Copyright 1985
おすすめ度★★★★★  (2005/12/5 2回目読了、1990/9/2 1回目読了)

ストーリー:

Charles Stanhope IIIと婚約していた美人の主人公Tracyは、母親の事業をのっとり自殺に追いやった街を仕切っている悪役のAnthony Orsatti, Joe Romano, Perry Pope, Judge Henry Lawrenceのたくらみにより、Prisonに送り込まれてさんざん苦労します。最初の1/3はTracyが苦労する場面が連続します。やがてTracyはPrisonを何とか出て、彼らへの 復讐を考えるようになります。

復讐を果たしたTracyは前科者として扱われ、まともには職につけないために、詐欺・盗賊の手伝いをはじめます。騙されそうになりながらも、だんだんと大きな仕事を成功させてゆき、ついには、華麗なる大泥棒として成功してゆきます。同業のJeffという男があらわれて、抜きつぬかれつの展開から、最後には2人で引退のための大仕事を企てます。

この世の富を手に入れたTracyを描く作者の表現力は楽しめます。泥棒のプロットは今読むと少々ロジカルでは無いのですが、20年前のこのストーリーが後の映画やフィクションに色々な影響を与えていると想像できます。

最後の仕事を成功させて、引退の場所のブラジルに向かう747のファーストクラスの機内でTracyはある人物と同席します。この落ちも意外で楽しいものです。

感想:

1985年に書かれた、 シドニー・シェルダンの代表的な作品です。実は1990年に一度読んでいましたが、2005年にもう一度読み直しました。この作品への印象は、はじめの1/3が主人公のTracyが騙されてPrisonに入れられて苦労するストーリーなので、いつのまにか暗いストーリーという感覚を持つようになっていました。あらためて読み直してみると、Tracyにとってつらい部分は案外と短くて、その後の華麗なる泥棒貴族になるストーリーが2/3を占めていて痛快なものになっていることに気づかされました。

ずいぶん以前に映画も見ましたが、映画では船上での2人のチェス・マスターとTracyが同時にチェスの対戦をするシーンが印象的でした。

この本で、はじめてPaperbackを全部読むことができたと言う人も多いようです。やや平易な英文と、主人公がTracyという一人に集中していればよいので、とても読みやすいと思います。Paperbackにチャレンジして挫折している方にも、恐れずに読んでいただきたいと思います。かなり単語が分からなくても、ストーリーを追いながら最後までたどりつける本だと思います。偉大なストーリー・テラーと言われるシドニー・シェルダンの文章の力が最後まで読者をひっぱってくれます。そういう力がある物語だと感じました。

古いからと言って敬遠しないでくださいね。

 

Master of the Game


* * * * * * *Copyright 1982
おすすめ度★★★★★  (2005/6/2読了)

ストーリー:

最初のシーンは短いものです。1982年のKate Blackwellの盛大な90歳の誕生日パーティ の場面です。孫のRobertは8歳ですが、ピアノの腕を披露します。

BOOK ONEは「Jamie 1883-1906」というタイトルです。P17-P170。世界中に会社をいくつも持つKate Blackwellの祖先は当時スコットランドの青年だったJamie McGregorが1883年に南アフリカにわたります。ダイヤモンドを掘り当てるという一攫千金につられての冒険です。Book1は南アフリカでのJamieの冒険物語です。散々死ぬような思いをしてダイヤモンドを見つけますが、その後も波乱万丈の出来事がまっています。Book1でじはJamieが一代でダイヤモンド採掘王の地位を獲得します。

BOOK TWOは「Kate and David 1906-1914」、P171-P218。Kateはすでに巨大な世界企業になっているKruger-Brent, Ltd.をしきり始めます。Book2はKateと夫Davidの物語です。Kateは最後の90歳のシーンまで以後出演してきます。Master of the GameのMasterはKateと考えて良いでしょう。

BOOK THREEは「Kruger-Brent, Ltd. 1914-1945」 P219-P248。ダイヤモンドで大きくなったKruger-Brent, Ltd.はどんどん巨大になってゆきます。1914-1950は2つの世界大戦の時代です。夫のDavidは兵器産業への参入に反対しますが、Kateが強引に参入します。1928年に息子のTonyは4歳になります。Book4がTonyの物語なので、年齢を覚えておいてください。

BOOK FOURは「Tony 1946-1950」 P240-P314。Kateの長男のTonyの物語です。Kateの「会社をついで欲しい」という希望に反してTonyは画家を志望します。彼がParisで画家の修行をする生活が描かれます。Tonyは画家としての才能を高めてゆきますが、Kateは介入しようとします。

BOOK FIVEは「Eve and Alexandra 1950-1975」 P315-488。Kateの孫娘、Tonyの娘は一卵性双生児のEve and Alexandraです。Eveは邪悪な正確の持ち主でAlexandraはすなおな性格です。Eveの邪悪さとKateの狡猾さが上手に描かれてゆきます。

EPILOGUEは「Kate 1982」のタイトルで再び1882年のKate 90歳の誕生パーティの場面にもどって来て終わります。

 

感想:

1982年に書かれた、 シドニー・シェルダンを有名にした、100年にわたる親子4代の壮大なサクセス・ストーリーです。大河ドラマになっています。使われている英語は今と同じですが、最新作の文章と言葉のほうがなめらかに感じました。この作品を今読むと、文と文のあいだがブツブツきれるところがあるように感じ られました。なんとなく、ダニエル・スティールの文章の作り方に似ているのかなーとも感じましたが。 この本はペーパーバックを読む人が読んでおくべき本でしょうね。話しの展開がはらはらさせる内容になっています。誰が読んでも面白いと思います。

ということは、たくさんの単語がわからない読者でも、ストーリーを追って最後のページまで行きつくことが出来る可能性が大きいと思われます。

Book1のJamieの物語だけでも内容が濃くて、1冊に出来るような優れた内容です。ダイヤモンドを掘る話しなので、Louis Sacharの「Holes」を連想しました。Holesを楽しんだ人は、この本も苦労無しに楽しめます。

この本が出た時にハードカバーがベストセラーになりました。私はPaperbackで買いました。20年以上も前に買ったPaperbackは、結局読まずにいました。すでに黄ばんでいましたが、読んでいるうちにページがばらばらになり始めたので、新しい物を購入しました。あと20年は背表紙のノリが持つと思います。

2005年の今年に読み始めたのは、みんなに愛されているPaperbackの英文がどんなものなのか、現在の私として確かめたかったからです。基本動詞がどう使われているのかにも興味がありました。この本ではBE動詞が多用されています。物語なので特にWASが多く使われています。受身(WAS+動詞ED)も多く使われています。動詞を2つ含む複文も多いのですが、動詞の一つはBE動詞にしていて自然に状況がイメージ出来るようになっています。

また、日本人がかなりのスピードで英語を読んでいる時には脳の中の働きがどうなっているのかを自分で感じてみたいとも思いました。日本語と同じぐらいのスピードで読んでいます。アメリカ人が早口で話すスピードよりも高速で読んでいるはずです。日本語には全く訳さずに、英語の音を頭の中で響かせて読んでいます。日本語に訳していないのはもちろんのこと、英単語も無意識で読んでいます。BE動詞が多用されているとか、WASが多いと言う分析は全部を読み終わったあとでチェックしたことです。

英語を使いこなしているのですが、これから基本動詞を学ぼうとしている人達に、どうすれば回り道をしないで、近道で英語を使いこなせるようになるのかを最近考えています。英語を使いこなしている状態(つまり英語を日本語と同じスピードで読んでいる状態)をうまく伝えることが出来れば、そこに至る道の説明が楽になるとも期待しています。

 

The Naked Face


* * * * * * *Copyright 1969
おすすめ度★★★☆☆  (2006/7/20読了) P316

ストーリー:

主人公はJudd Stevensという精神分析医です。患者の一人が路上で殺され、セクレタリーもOfficeで殺されたことから、警察からJuddが疑われます。犯人が明かされないまま、Juddは再び殺されかかります。Juddによる犯人探しでストーリーが進められます。Juddは精神分析中の患者との会話をテープで録音してあります。犯人はこの音声テープを狙っているのか?

The Naked Faceと言うのは、人は普段はMask(仮面)をかぶっているがその正体を現したところがMaskに対してNakedだとJuddは言っています。

最後のほうに、突然イタリア系のマフィアがでてきて、それがJuddが心を寄せかかった患者のAnneの夫なのです。最後の段階で意外性を演出使用としたようですが、あまり成功していないと感じました。

 

感想:

1969年に書かれた、 シドニー・シェルダンの初期の作品です。それにしても古い作風だと言う感じがします。シドニーシェルダンを下手な作家がまねして書いたようなストーリーの進め方です。

シドニー・シェルダン読みとしては、読んでおくべきだと言う義務感みたいなもので読みました。

緻密さが足りない、人物の心理描写がまだまだ足りないなどと感じたので、辛口で★3つになりました。

彼の自叙伝『The other side of me』によると、Sidneyは若い頃は、劇場ミュージカルやScreenwriterで成功した作家だったのですね。これで、「ストーリーは上手だけど、なんで人物描写がうまくないんだろう?」という長年の疑問が解けました。映画の脚本と、俳優のせりふを書いていたので、人物の心理描写を書く必要が無かったのですね。心理描写は俳優がやっているのです。