Ray Kurzweil

2012/11/14

How to Create a Mind

Copyright 2012 (11/13発売)
* * * * * * * 2012/11/14読書完
おすすめ度★★★★★  約100,000語 P282

夏ごろに予約を入れていました。The Singularity is Nearから7年も経っているので、最新の脳科学の現状も知りたくて待っていました。なので、到着後にすぐに読みました。自然科学系・理系の本は知識を得るために、多少の苦痛を我慢しながら読むのですが、この本は特別で、読んでいて私にはかなり面白く「そうそう」と言いながら読み終えました。The Singularity・・・よりははるかに読みやすかった。内容は、期待通りのところと、あまりそうではないところが混在していますが、今後注目されそうな本として★5つにしました。

人間の脳の考える機能を提供する新皮質(neocortex)の仕組みを著者なりに提案しています。 neocortexの中のneuron(神経細胞)は従来はスパゲッティのように複雑に絡み合ってして、知識が増えるほどそのつながる数が増えてネットワークも複雑になると考えられていました。 これに対してChapter 4では、最新のhigh-resolution imaging technologyを使ってHarvardのVan J. Wedeenが2012/3月に発表した、多数のCubeが整然と3次元のGridで並んでいる様子に注目しています。 GridとGridの接続にはあらかじめconnectionsが用意されていて従来考えられていたよりも容易に学習の結果がconnectionsとして残せる構造です。 NIH News (National Institutes of Health) Brain wiring a no-brainer? Scans reveal astonishingly simple 3D grid structure http://www.nih.gov/news/health/mar2012/nimh-29.htm

neocortexは約300 millionsのpattern recognizersで構成されていて、一つのpattern recognizerは約100個のneuronsで構成されていると提案されています。pattern recongnizersは下層から上層までの多重のhierarchies構造になっていて、最下層はInputを処理するために、文字の線の部分だったり、単語の音のphoneme(音素)のパターン・マッチングを行うためのpattern recognizersがあります。

学習は、pattern recognizerをレゴ(lego)に例えて、その組み合わせ接続により行われるとしています。Rayは40年近く音声認識の技術にかかわってきたので、最新の音声認識の話も多く語られています。最新のiPhone assistantの"SIRI"にも彼の会社Nuance Speech Technologiesの技術(HHMM)が使われているそうです。

HHMMはhierarchical hidden Markov modelsのことです。詳細はP142-146にあります。hidden Markov modelsは一種の状態遷移図です。状態の遷移に注目して状態statesの中身を隠したmodelのためにこう呼ばれています。コンピューターの音声認識には学習機能を付加して、SIRIの実用化に寄与しています。学習機能にはHHMMを使っているそうです。著者は、音声認識の開発の経験から、neocortexのpattern recognizersが多重の階層構造になっていると考えるとつじつまが合うそうです。

Chapter 9では、Consciousをとりあげて少し哲学?または心理学的に著者が語ります。結局Consciousとは何かということを定義することは困難だが、俺はConsciousの存在を信じる!となります。 また、Free willにも触れていて「脳はdecisionする前の条件に従ってあらかじめ決められたと思われる結論に至る」ならば、それはfree willと言えるのか?と自問自答しています。Conscious, Free willなどの語彙を違った視点で見れる面白い章です。 一度読んだだけでは、どのように英語学習に役立てたらよいのか具体的なイメージが固まらないので、もう一度読みながら、自分なりに整理してみるつもりです。

The Singularity is near :
When Humans Transcend Biology

Copyright 2005
* * * * * * * 2012/4/24読書完
おすすめ度★★★★★

179,326語、P487(Epilogueまで)、P652(Notes & Index含む)

タイトルのSingularityというのは、コンピュータシステム
(WEBに接続されたさまざまなKnowledgeを含む)
が人間の能力を越えること&時期を話題にしています。
具体的には、価格1000ドル(9万円弱)のPCの中に実現できている状態です。
その時は案外と近くて、2045年頃だと著者は予測しています。

以前、話題になったので3年ほど前に購入しておいたものを、やっと読みました。
また、多読を始めたのですが、読み終わるまでにおよそ1カ月かかりました。
ヘビーな内容の本です。

コンピュータおよびネットの未来予測だと思って読み始めたところ、
もっと壮大な内容であることに気づきました。

サイエンスフィクションだと思われるかもしれませんが、
PCが人間を追い越すことの具体例ですごいのが、人間の脳がReverse Engineering
出来ていて(2030年代後半)、脳の情報をPCに移すことが出来ているところ。
つまり、Singularityの時期以降は、身体は死んでも脳は死ななくなる。
ハード・ディスクを入れ替えてソフトを完全に移し替えるように、
人間の脳をコピーして、入れ物を移し替えることができる世界になる。
そうなった、Singularity以降の世界では人間の死を再定義しなければならない。
当然ですが。
そのような世界の実現が、あんがい近いと著者は予測しています。

人間の体も、血液の成分を酸素を100倍運べるようにすることで、肺がほぼ不要になる。
血液が自分で流れるようになると、中央の心臓も不要になる。
つまり、人間の体も、バイオとナノテクで、死ななくなる世界。
年をとるDNAの仕組みが組み替えられる。

コンピューターがチェスのチャンピオンを打ち負かしてから10年が
経ちましたから・・・。
著者のカーツウエルはチェスでコンピュータが勝つ年を予測して1年違いで
当てたことで有名です。

 PCのハードの性能があと100倍になると、人間の脳の処理能力を越える
そうです。(10の16乗インストラクション/秒程度)そうなる時期はたぶん
2020で、その頃には人類の知識もほとんどが電子化されています。
(あと8年ですね・・・)

 日夜、人類の知的財産と仕事をコンピューターにインプットすること
が続けられています。NET社会になり、このINPUTは加速されています。
同時に、情報を検索する機能も進化を続けています。

 本書は、人類の過去・現在・未来を、The Six Epochs of Evolution
として、6つのステージで定義しています。

Epoch 1 Physics and Cheistry
  Information in atomic structures

Epoch 2 Biology
  Information in DNA

Epoch 3 Brains
  Information in neural patterns

Epoch 4 Technology
  Information in hardware and software designs

Epoch 5 Merger of Technology and Human Intelligence
  The methods of biology (including human intelligence) are
  integrated into the (exponentially expanding) human technology base

Epoch 6 The Universe Wakes Up
  Patterns of matter and energy in the universe become
  saturated with intelligent processes and knowledge

 

Reverse Engineering

 2030年頃には、仕事でもコンピュータに負けるようになります。
それが現在のPCの価格で実現できている時期予測の2045は外れていても、
将来かならずその時期は来ると、この本を
読んで思うようになりました。

 そのときの人の幸せとはどう考えたらよいのでしょうか?・・・

 この本は、2005年に発売されたときに全米でヒットして一大センセーション
を巻き起こしました。それから7年後に私は読んだのですが、
内容には古さをあまり感じませんでした。著者の予測が現在では
当たり前に実現されているからだと思います。

 読みながら、この作品からすでに7年たっているので、2012年の最新の
技術と最先端の研究を集めた、最新版が欲しいなと感じていました。
さっそく検索したところ、以下の嬉しい予告を見つけました。
今年の10月に、絶対に買って読みます。
 タイトルから推測すると、Epoch 5の内容になると思いますが、
言語習得の視点からも大変に期待しています。

クローン技術を人間の複製に使ってはいけないとされていますが、
脳の複製はどういう扱いになるのでしょうか。

How to Create a Mind: The Secret of Human Thought Revealed
[ハードカバー] Ray Kurzweil
ハードカバー: 384ページ
出版社: Viking Adult (2012/10/2)
言語 英語, 英語, 英語
ISBN-10: 0670025291
ISBN-13: 978-0670025299
発売日: 2012/10/2

 人生の中のいつかどこかで、読むべき本が私を見つけてくることを
このSinularityを読んで感じました。
「How to Create a Mind」に対しても、何かを感じます。
きっと、machine/computerの概念を根本から覆してくれそうです。
machineの概念は、すでにSingularityで十分くつがえして
くれていますが・・・


Machineが人間よりも賢くなったら、君はなにがしたいのか?
そんなことを考えながらこの本を読んでいて、
43年前の以下の会話を思い出しました。

 1960年代最後の大学紛争のときに、友人のT君と「なぜ働くの?」
という議論をさんざん行いました。
 豊かになって人生に余裕が出来たら、
@ (仕事に追われて)時間が無くてやりたくてもできなかったことをやる。
  特に知的活動、趣味をみんなに役立つように研鑽する。
  (楽観主義的)
A ベンツに乗ってパチンコ屋に入り浸る。
  (悲観主義的)

 それから43年が経ちました。日本はものすごく豊かな国になりましたが、
幸福感は当時よりも薄くなったことを感じてしまいいます。
震災、原発などにもっと賢く対処できるはずです。


各章の内容のサマリーです。

第1章 The Six Epochs

 6つのEpochsとは何かを紹介します。

第2章 A theory of Technology Evolution:

      The Law of Accelerating Returns
  電子工学の分野ではとても有名な Moore's Lawを具体的に
 紹介しています。

第3章 Achieving the Computational Capacity of the Human Brain

 人間の脳の処理能力を、コンピューターのパラメーターに
 置き換えて紹介します。

第4章 Achieving the Software of Human Intelligence:

     How to Reverse Engineer the Human Brain
 人間の脳の複雑さを解明して、脳のモデル化を試みます。

第5章 GNR: Three Overlapping Revolutions

 GとNとRとの融合を語ります。
  Genetics:
     The intersection of Information and Biology
  Nanotechnology:
     The Intersection of Information and the Physical World
  Robotics:
     Strong AI

第6章 The Impact...

 機械は人間を越えられるか?多くの人は機械のイメージにとらわれて
 いるけれど、将来の機械というとメタルではなく有機的なバイオと
 先進的なメタルとPCが融合したもの。
 (Machineの概念を変えないといけない時代になってきました)

 そのときの、人体、脳、長寿へのインパクトは。
 学ぶ、働く、遊ぶことへのインパクトは。

第7章 Ich bin ein Singularitarian

 Singularity以降の状態を想像する章。
 Still Human?
  Consciousnessって何? 
   ComputerはConsciousnessを持つことができるかということを議論するためには、
   Consciousnessとは何かを明らかにしなければならない。
 Who Am I?  What Am I?

第8章 The Deeply Intertwined Promise and Peril of GNR

 GNRのリスクを語ります。
 バイオハザード以上のリスクを想定する必要がありそうです。
 病気を治すための細胞が人間に危害を与えることを知らずに
 勝手に増殖をはじめたら・・・
 先にウイルス・ワクチンをあらゆる分野で考えておく。
 テロが起きたら?

第9章 Response to Critics

 このSingularityの考え方に対する反論に対して具体的に
 説明を試みています。
 この章を読むと、内容が2004年のもので古く感じます。
 はやく、2012年の新書を読みたいですね。ウズウズ・・・

Epilogue P487

『How to Create a Mind: The Secret of Human Thought Revealed』
が発売されてよかったら、本書も読んでみてください。
原発についても彼の視点でコメントするのかな?

Singularityはヘビーな本なので、この分野に興味がある特にエンジニアに
読んで欲しいと思います。共感したら、技術進歩のリスクの警鐘も鳴らして
いただけると良いと感じています。
 

技術的特異点 Singularityのサイト
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8A%80%E8%A1%93%E7%9A%84%E7%89%B9%E7%95%B0%E7%82%B9