Paulo Coelho

2006/4/16

The Alchemist

Copyright 2002
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おすすめ度★★★★★★

10年に1度、とてつもなくすばらしい本にめぐり合います。過去10年では、「Tuesdays with Morrie」が私にとって最高の本で、どなたにもお勧めしています。さらにその前の10年では、ちょっと硬くて難しいのですが、「Man's Search for Meaning」(Viktor E. Frankl)です。このAlchemistは最近もっともわたしを感銘させた本のひとつです。以下の『Zahir』という本の裏表紙には、世界中で5,600万部売れてい て59ヶ国語に翻訳されたそうです。お勧め度は星6つです。

出版社の公式サイトです。

http://www.harpercollins.co.uk/microsites/paulocoelho/

著者はブラジル人です。サイトにあるプロフィールです。Paulo Coelho was born in Rio de Janeiro, Brazil, in August 1947. He attended law school there but abandoned his studies in 1970 to travel throughout Mexico, Peru, Bolivia and Chile, as well as Europe and North Africa.

ストーリー:
 一種の大人のおとぎばなしです。

主人公は アンダルシアの羊飼いの息子Santiagoです。羊飼いの息子にしては彼は本をよく読みます。それは父親が、SantiagoをPriestにしたかったからです。16歳までにLatin, Spanishそして神学を学校で学びました。でもSantiagoは牧師になりたいのではなく、世界中を旅したいのです。Santiagoは同じ夢を2度見ます。それはエジプトのピラミッドのそばに宝物を見つけると子供がSaniagoに告げる夢です。女の子が場所を言おうとしたところで2度とも目が覚めてしまいます。

彼は故郷をひとりで離れて宝物探しの旅に出ます。

Alchemistというタイトルは、Santigaoが地中海をわたりアフリカに住み始めてからいよいよエジプトに向けて旅を始めるときに旅の途中で会うAlchemistを求めている青年と旅を続けること。エジプトの付近で本物のAlchemistに出会うことから来ていると思います。

ストーリーを書くと、本当の楽しみが奪われかねないので、このくらいにします。

 

感想:

宝物さがしのQuest物語ですが、基調にあるのは、人の心のパワーだと思います。夢を追いかけるパワー、苦難を乗り越えるパワー、そしてあきらめないパワーです。気持ちを持ち続ければ、はじめ出来なかったことも、何年かするとできるようになっている自分を見つけていた。たった167ページの短い物語ですが、読み終わった後に、とても癒される不思議な本です。人は誰でも人生の意義を考えたことがあると思います。若い人々は、自分の人生にとってどんな仕事が天職なのか期待と不安とがっかり感が入り混じっていると思います。団塊のせだいの私も、今までやってきたことが自分の天職なのだろうなーと無理にナットクさせているところがあります。それでいて、未来にもう一度開かれたチャンスが来ることを期待していながら、毎朝、目を覚ましています。そして1日が過ぎて、フラストレーションがたまってきたりして・・・

この本の魅力は読んでみないとわからないので、読むしかないですよ。The Little Prince(星の王子様)に匹敵するmemorable and meaningfulな本だと裏表紙に書いてありますが、よりロジカルなところが私は好きです。あー、嵐のシーンなどはまるでロジカルではないので、一概には言えませんが・・・

読まないと、人生を損したと思わせる本ですぞー。

最近、本屋で『The Zahir』という新作を見つけて買いました。裏表紙によると、Alchemistの続編にあたると書いてありますが、現代の物語のようですので、楽しみではあります。

 

 

The Zahir

Copyright 2005
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おすすめ度★★★★★

Alchemistのあとで読むと、正直いって少し物足りない感がありますが、私も含めて期待が大きすぎるのでしょうね。出来としては優れていると思います。

ストーリー:
 かなり著者の自伝的な風味があることを感じました。主人公の私は著名な著者です。突然いなくなった妻Estherを捜しながら、いろいろな巡りあいがあり、自分が成長してゆく物語です。

妻のEstherは、夫の私よりも人生の意義を深く追求する人物に描かれます。夫の対応や日常生活から十分な満足が得られないまま、戦場からの記事を書く仕事に没頭し始めます。そしてある日突然パリからいなくなります。夫は、妻が誘拐されたのではないのか、果たして生きているのだろうかという心配な気持ちと、あるいは自分に不満で家を出たのかもしれないという二つの可能性に悩まされます。

妻が最後に目撃されたのは、カザフスタン出身の青年Mikhailと一緒にレストランにいるところでした。この謎のMikhailにやがてめぐり合い、彼が毎週木曜日の夜に集会を行うレストランを訪れて不思議なダンスのパフォーマンスを目撃します。MikhailからEstherが元気でいることを知り、居場所を突き止めるためにMikhailと接するようになります。

MikhailはLady(少女の姿をしている)からVioceを聞いて、さまざまな人の悩みを解決したり、そのためにこれから起こることを聞くことができたそうです。いまでも出来る様子が見られるけれども、単なるテンカンが起きた時の妄想かもしれないと主人公は半信半疑のままです。

妻が何らかの理由で主人公から去って行ったのですが、その理由をさがしMikhailと接しながら徐々に妻の言葉を思い出しながら自分が変わり始めます。

そして最後に、妻がいなくなってから2年数ヵ月後に妻のいるというカザフスタンを訪問します。

 

感想:

スピリチュアルな愛を追求していますが、この著者の作風の特徴である、人生の意義も同時に探ろうとしています。主人公の有名作家がパリで生活している様子を中心に巧みにリアルに描かれます。雑誌の次の作品に対するインタビュー。いろいろなパーティ。そこでの会話、主人公の気持ちの動き。自叙伝的に書かれているために、読んでいて本当のことなのかフィクションなのか錯覚してしまうほどで巧みです。

物語の中で『The Alchemist』や『The Pilgrimage』を書いた様子が出てきます。たとえば Alchemistは『千夜一夜』物語にヒントを得たそうです。

EstherはJournalistとして働いています。彼女との会話から、彼女を真に理解したいのならば、まず自分をきちんと理解してほしいと言われてしまいます。Estherも自分を理解するため、明日の命も分からない緊張した環境の中でのAfricaのCivil Warのレポートを書きたいと働いているMagazine社に希望を出して受け入れられます。

「あなたは幸せ?」という問いは、スピリチュアルな愛の探求に向かいます。幸せな結婚生活とは何なのか?さらに自分を本当に深く理解したうえで、いままでの考え方を変え、自分が変わったことを感じて(Mikhailもそのように感じたので、主人公をEstherのところに連れて行く時期が来たことを告げます。)

幸せに見える人々も、悲しそうな目をしています。典型的な人生の成功は、「立派な夫を持ち、家を持ち、二人の子供を育て、良い車に乗る。」ことだと考えて、そのことで忙しい毎日を暮らしている。本当の目標は別のところにあるとは疑うことをしない・・・と書かれていますが、贅沢な悩みですが反論できませんよね。

そこから脱皮して、自分を清めて(一種の悟りなのかもしれません)最後にEstherに会いに行く物語です。

Zahirとは以下のように書かれています。

According to the writer Jorge Luis Borges, the idea of the Zahir comes from Islamic tradition and is thought to have arisen at some point in the eighteenth century. Zahir, in Arabic means visible, present, incapable of going unnoticed. It is someone or something which, once we have come into contact with them or it, gradually occupies our every thought, until we can think of nothing else. This can be considered either a state of holiness or of madness.

どうして妻がいなくなったのか、どうしたら妻が自分を受け入れてくれるのだろうかと問いかけている間は主人公の目の前にZahirが立ちはだかります。ようやく妻に会いに行こうとしたときにZahirから開放されます、というかZahirが消えてなくなります。悟りを妨げているものや考えがZahirであるといいたかったのではと理解しましたが・・・