Michael Chrichiton

2006/8/15

Jurassic Parkで有名な Michael Crichtonは恐竜ものばかりではなく、幅広いサイエンスものを書いています。 Michaelは非常にロジカルに科学技術を記述する能力があります。
私のような理工系の人間は、単純にだまされてしまいます。論理的に話が進むので、 ありえないことを、当然あるよなー、と変に納得して読まされてしまいます。Jurassic Park では遺伝子からの恐竜の再生が書かれています。当時は誰も信じなかったテーマですが、 クローン牛が誕生したことを知った後では信憑性が出ています。

話のストーリーは、 まるではらはらするような映画を見るように進みます。その筆の力には感心します。ただし、 人物の心理描写が苦手なようです。このために、Page Turnerといえる作品になるには、 いまいちなのが残念です。

 

State of Fear

* * * * * * * Copyright 2004 P638
おすすめ度★★★★☆    (2006/8/15読了)


Story:


地球温暖化を利用した環境保護団体とその不正を暴こうとする人々の戦いが描かれている。State of Fearというのは環境問題に対する恐怖の事で例えば海面上昇、異常気象による災害。

 主人公は大富豪のGeorge MortonとJohn Kenner。一番登場するのはMortonのクライアント弁護士のPeter Evans。悪役はThe National Environmental Resource Fund(NERF)の中の過激派。NERFはMortonの資金給与を受けて、太平洋のVanutu島の水没危機に 対して米国のCO2排出の影響が大きいとしてEnvironmental Protection Agencyに対して訴訟を準備している。Vanutu島は海抜a few feetのeight thousand inhabitantsが住む架空の島。(Netで調べると、太平洋にはVanuatuという島が実在するとのことですが、異なるようです。)
各章は、場所と日にちと時間がタイトル代わりになっています。
NERF側の主要人物がNicholas Drakeです。環境問題のConferenceを主催して、問題の大きさを認識させて、より多くの資金を集めようとします。これに同調するように テロリストたちは、落雷、津波などの災害を人為的に拡大したり、発生させようとします。
テロに対して、John Kennerが立ち向かいますが、Evansが巻き込まれて行き、いちばん登場シーンが多くなります。Evansに対して著者は一般的な大衆の視点で 環境問題を見せようとしているように思われました。
津波を人工的に起こそうとするテロに対するKennerたちの行動を読んでいて、Clive Cusslerの『Shock Wave』を思い起こしました。

感想:


私達が理解している、地球の温暖化問題、CO2排出の問題に対して、著者はちょっと待ったと言いたいようです。マスコミに洗脳されない ように注意しなさいと言っています。弁護士のEvansが常識的な考えをする人物に描かれていますが、Kennerは地球の温暖化は程度が 軽微かほとんど影響ないとする視点をEvansに与えようとします。テーマが環境問題なので、読んでいてフィクションだか ノン・フィクションだか分からなくなってきます。

Michel Crichtonは本書執筆のため、3年の月日をかけ、環境問題の関連書を大量に読んだそうです。実際にTVの討論会では環境問題の アドバイザーとしてコメント活動もしているようです。本書では、マスコミが言う単純な温暖化をそのまま信用しないように という警告として、参照文献とグラフをふんだんに使っています。このために、学術論文的な雰囲気になっているので、 科学者などの読者からの批判や反論が多く寄せられているようです。
 Annという環境問題に対して資源の保護、CO2削減を叫んでいる彼女が広大な敷地に大きな家を持ち、エネルギーを大量に 消費していることが物語に出てきます。アメリカ人は、自分達は消費しても良いが、他国には節約をせまるという態度が 見えてきます。Kennerが京都議定書に対して温暖化の証拠がないので、米国はサインする必要がないと言い切っている ところは著者の本音かどうか知りたいところです。
 物語の最後に登場人物が、地球環境に対しては、既存の利益団体ではなくて、多角的に見れて、きちんとしたデーターを 取る活動が必要だと言っています。

 また、APPENDIX Iでは、科学と政治が結びついて大変な被害を出した例としてナチスのEugenics(優生学)が多くの反対者の声を押しつぶして ユダヤ人のホロコーストをあげています。地球環境問題を政治と結び付けてはならないと警告しています。

 この本を読むと、環境問題の真実を知りたくなる、疑いの目を持たされてしまう。それほどフィクションだか ノン・フィクションの間があいまいです。

 それよりも、Clive Cusslerのフィクションのように、エンターテェィンメントとして気持ちよく読めば良いと思いました。

読者をエンターテェイ「ンする点では著者は少し失敗していると思いました。最後が説教じみています。
 


Prey


* * * * * * *Copyright 2002

おすすめ度★★★★★

物語:


Prey(えじき)とは私たち人類です。攻撃するのは人類が作りだした微粒子のロボットです。ミクロの世界の話です。 ネバダ州の砂漠の実験室で、微粒子のロボットが外界に出てしまいます。この微粒子のロボットは単純な構造です。 もともとは数万の微粒子により、カメラを作ろうと計画していました。一つ一つは、単純な視覚と、簡単な羽と、 3時間もつ太陽電池と、小さなメモリーです。ところが、実験室外に誤って放出されたこの微粒子ロボットは自己 増殖しはじめます。このロボットはPredator(肉食動物、略奪者)としてプログラムされています。このPredatorの プログラムはもともと主人公の私Jackが開発したものです。昔のJackの部下たちは今では、Xymos社に雇われネバダの 砂漠で微粒子ロボットのカメラの開発に携わっています。Jackの妻のJuliaはXymos社のExecutiveとして開発にかかわって いることは、JackがXymos社にトラブル解決のために招聘されて分かってきます。開発に携わった人々はその増殖を 阻止しようとしますが、ことごとく失敗してゆきます。ネバダに招かれたJackは昔の部下とともに活躍します。

感想:
作者はこういうテクノロジーに対してqueasy(不安、吐き気を催す)であると警告しています。人類の歴史は武器から 原爆を作り、バイオテクノロジーからクローンを作り出しています。常に歯止めを考える人が必要で、そういう人々の 発言を決して抑えてはいけないと言いたいのです。微粒子は一つ一つの知能は単純ですが、たくさん群れること、 自己増殖のサイクルが短く、増殖のたびに進化するという2つの点でいろいろな行動を可能にしてゆきます。Jackは 単純な知能を持つ群れがどのように行動するのかを研究した経験があります。現在のITの世界で行われているNet処理、 パラレル処理が群れで行われた場合に、驚くべき結果が出ます。これが良い方向に向かえばよいのですが、コントロール 不能になり危害を及ぼす場合があると言いたかったのでしょう。

Page-turnerという宣伝は認めても良いと思いました。 とっても読みやすかったです。

 

Timeline


* * * * * * * 1999
おすすめ度★★★★★

この本は映画化されました。


Timelineのテーマはタイムマシンです。舞台はフランスの南西部にあるドルドーニュ河畔 (Dordogne)のお城です。フランスの地名は手元にある詳細な道路地図を調べた限りではほぼ実名 です。

Dordogne川は東から西に流れています。かなり大きな川で、下流はボルドー市の北側を 通り大西洋に流れ込みます。このあたりは約20年前にドライブしたことがあるので、なつかしく 読みました。

物語に出てくる1357年当時のTowns of Castelgard and La Roqueはボルドー市からDordogne川を東に32マイル(私の地図は イギリスで買ったのでマイル表示です。)ほど遡った所にあります。ここに La Roque-Gageac, Domme, Sarlat-la-Caneraなどがあります。また途中には、ボルドーの 東20マイルの所にBergeracという比較的大きな町があります。

ハイテク企業のITC社は物体を 過去に送り込み、取り戻す技術をひそかに開発しています。世界各地の遺跡の発掘に投資して います。ねらいは、遺跡を過去の実物道理に復元して、21世紀のテーマパークを作り、巨大な ビジネスを起こそうと言うものです。このために、ビデオカメラを過去に送り込み過去の撮影 資料を沢山持っています。

Castelgard and La Roqueの発掘を行っているProfessor Johnstonは発掘中の修道院のあまりにも正確な 図面がITC社から出てきたことに疑問をもち、アメリカのITC社に乗り込みます。Dordogneの 発掘現場では、600年前の資料の中にProfessor Johnstonの筆跡で、「HELP ME 4/7/1357」とあるのを見つけます。彼らは何かの冗談だと思い ますが、念のため年代鑑定をすると、600年前に書かれたことがわかります。

ITC社から発掘 現場の代表4名がアメリカに呼ばれて、Professor Jonstonを救出に向かいます。37時間以内の救出です。37:00:00からカウントダウンが はじまり、中世での冒険のあと、00:01:44ぎりぎりで戻る話は、出来すぎです。

お勧め度は★4つなのですが、私個人としてはDordogneに行ったこともあり、とっても楽しく 読めたので★5つです。ただし、高橋さんが(お楽しみペーパーバック)で書いているように、 なかなか読む速度が上がりませんでした。人物描写がイマイチなのが原因でしょう。
(2001/1/20)

 

AIRFRAME

Copyright 1996
* * * * * * *
おすすめ度 ★★★★★
この物語は、サイエンスフィクションとは全く異なるお話です。バンバン撃つ場面のない トム・クランシー風のジャンボ・ジェット機のテクノロジーと人間のエラーの話です。

Hong Kong発Denver行きのTrans-Pacific545が突然Nose Diveを起こし、乗客3人が死亡、 56人が怪我をします。545はLos Angelesに緊急着陸をします。原因究明に、Norton Aircraft社 では、Quality Assuranceのvice presidentでやり手のs. Casey Shingletonをアサインし、 プレス発表も任せることになります。Caseyが実質的な主人公です。

Airframeとはこの飛行機の機体のことです。多くの技術者を使った綿密な調査が行われます。 機体の調査、フライトレコーダー、ボイスレコーダー、最終的には、事故機を使ったDiveの 再現テストにより、Caseyはパイロットの操縦ミスと結論付けます。

この作品により、Michael Crichtonは恐竜を書かなくても、読者を十分以上に魅了する作家 であることを証明しました。英語も中くらいよりやや易しいので、内容に引きつけられて、 どんどん読めます。おすすめ。女性の主人公の描写もまあまあなので次に期待したのですが。
(2000/2/11)

Lost World


* * * * * * * Copyright 1997
おすすめ度 ★★★★★
Jurassic Parkの6年後を想定した、 続編です。恐竜達のそれぞれの種類による生活パターンがリアルに書かれています。 ファーブルの昆虫記の恐竜版です。

Trannosaurus Rexの生態や、小さくてすばしこい Procompsognathusの生態(獲物をすばやく、かしこく 捕獲する様子)がわかった後に、 登場人物がこれらの恐竜に出くわすシーンでは、我々はものすごい臨場感を味わうことが出来ます。 文章からは、映画とは違った臨場感を味わうことが出来ます。おすすめ。
(2000/2/11)

SPHERE"

Copyright 1987
* * * * * * *
おすすめ度★★★★★
南太平洋の1000フィートの海底で、巨大な宇宙船が発見されます。これは、300年以上も前に 地球に来たものです。Norman Johnsonが急遽探索のために呼ばれます。彼は心理学の教授です。

海底に入った彼らはついにはコンピューター・スクリーンでの交信に成功します。英語と、 宇宙の物体が使う英単語の交信が好奇心をくすぐります。
WHO ARE YOU?
I AM ONE..
"Good" Barnes said. "So there's only one. Ask him where he's from.
WHERE ARE YOU FROM?
I AM FROM A LOCATION.

Sphereの題名は、宇宙船の中にある球体のことです。この球体には人が入れるのですが、 入った後にその人のなにかが変わります。
(2000/2/11)