MELVYN BRAGG

2005/5/26

The Adventure of English

Copyright 2003
* * * * * * * 2005/5/26読書済み
おすすめ度★★★★★

これは、英語の成長物語です。英語の語学研究書といえるノン・フィクションです。

物語:

物語と言うか、500ADから2000年の現代までの、英語の歴史が書いてあります。
年代順に書かれているので、英語の自叙伝的に作られています。

1 The Common Tongue

英語はいつから形成されたのか。紀元5世紀にイギリスのそとから来たGermanic warrior tribesが
持ってきたとしています。その言語のもとをたどると4000年以上前のインドにたどりつくようです。

現在の英語の最も良く使われている単語のTOP100をしらべると、Old English
(上記のGermanic warrior tribesがイギリスから持ち込んだ。)が、96単語、Old Norseが
語源の単語が3つ (they, their, them)、仏語が語源の1語(number)だそうです。

2 The Great Escape

英語には名詞の格変化や性別がありません。また動詞も仏語のように主語による
複雑な語尾変化がありません。この英語の特徴である単語の語尾が変化をやめたのは
AD500年からAD1000年の間です。 AD500年ごろのEnglishにはまだ語尾の変化がありました。
単語の語尾が変化しなくなり、前置詞が使われ始め、語順が英語の意味を決めるのに
重要な役割を果たし、EnglishがGermanicの性質から離れて行きます。

英語のもう一つの特徴である、外国語の語彙を積極的に取り入れる性質はこの頃には
まだありません。この頃の英語の語彙約25,000語にはほとんど他の言語の語彙が見当たらないのです。

3 Conquest

イギリスがフランスに支配された1066年のノルマン・コンクエスト以降の英語がどんなだったか
書かれています。その後、約300年も仏語の支配が続き、教会の公文書はラテン語という
イギリスの社会で英語がいかに耐えて生き延びたか。この300年間にOE (Old English)の語彙の
85%が失われたと言われています。10,000語以上の仏語の語彙が英語に侵入しました。
OEは家庭の台所(主婦)や地方の下層階級に使われ続けたのです。
英語の外国語を吸収する能力・性質が仏語を英語化することに役立ちました。

4 Holding on

Norman Frenchがイギリスを支配し始めても英語は変化(進化)をつづけます。
生き続けた証拠です。 9世紀の英語には前置詞がなく、名詞の語尾変化で間接目的(彼に)
などを表していました。その頃の英語と現代英語の比較です。

Se cyning geaf blancan his gumum.

The King gave horses to his men.

注目はOld Englishの単語guma(=man)の語尾変化形名詞gumumはto menつまり
「複数の男たちに」と言う意味です。まだ前置詞はありませんでした。
日本語の「てにをは」のようなものが名詞の語尾についていたのです。
OEの方法では複雑な文章になると目的語の関係がわからなくなるという欠点を持っていました。
また定冠詞のTHEが使われる前だったために正確さに問題がありました。  < BR> 12世紀以降に前置詞や定冠詞が導入されはじめました。また単語の語順も重要な意味を持つようになって来ました。

また有名な話として、生きている動物は英語、食卓の動物は仏語が使われていました。
The English laboured, the French feasted.です。英語(生きている)、仏語(料理された)単語を並べると。

cow/beef, sheep/mutton, calf/veal, deer/venison, pig/pork

沢山の仏語が英語に入り始めましたが、仏語はすぐに英語式発音に変えられて、
英単語として使われ始めます。

5 The Speech of Kings

1250年ごろのイギリスでは商業活動の必要性から、英語と仏語の交流が盛んになり、
英語に仏語が大量に入り始めます。仏語は1066年以降にどっと英語に入ったわけではなく、
1250年ごろに加速度的に英語の語彙に入り始めたのです。このころが最大の英語存亡の危機でした。
イギリス王の公式文章はLatinでした。その上に仏語が氾濫し始めると、英語が生き残る場所は、
台所の主婦とバイリンガルの子供の中でした。

英語が生き残りのためにとった自衛策は仏語との共存でした。仏語を英語に取り込むけれど、
元の英語とはビミョウな差を付けて両方を使いこなしたのです。
Ask英、demand仏。bit/morsel, wish/desire, room/chamberなどなどの単語のビミョウな
意味の違いを作り、人間の思考の明快さ、正確さを増していったのです。
start/commenceなどは、startが単純素朴に始めるのに対して、commenceはエレガントに
はじめるようなcultural color色づけがされてゆきました。
現在はanswer/respondが異なるように、libertyとfreedomのニュアンスも異なります。

なんと英語の復活を可能にしたのは1348から1350年にかけて猛威をふるった
Black Death黒死病でした。当時1200万人いたイギリスの人口のうち1/3の400万人が死に絶えたそうです。
その結果、労働力が不足し、最下層の階級の人達(仏語を知らない)を一つ上の階級の
仕事につけざるを得なくなりました。圧倒的に人手が不足したからです。

それまで公文書は仏語、教会はラテン語でしたが、言葉がわからない人であふれたために、
公文章が英語で書かれ始めました。1362年ごろです。

Kingの書く文章に英語が認められるようになったのは1399年からです。

6 Chaucer

Chaucerの書いたThe Canterbury Talesが英語に対して行った貢献は偉大なものでした。
現代英語はChaucer(1340 - 1400)がいなかったら無かったかもしれないと言われるほどです。
Chaucerは教養人でしたが、外交官と言う仕事柄でヨーロッパを良く旅していました。
1370年代のイタリアのミラノへのミッションで彼はイタリアのはるかに進んだ詩の世界にふれます。
Chaucerは1386年にKent州のKnightの称号を得るとともにThe Canterbury Talesを書き始めています。

フランス語の単語を20-25%ちりばめ、ラテン語やOld Norse単語を借用しながらも骨格は
英語で書かれています。人種のるつぼのロンドンを舞台に出身地や階級の違う登場人物を
借用する単語の違いで見事に表しているそうです。

Chaucerは英語の単語吸収能力と、柔軟さ、そして表現の豊かさへの可能性を実証しました。

7 God's English

14世紀のイギリスのRoman Cathoric教会のBibleはLatinで書かれていました。
聖書は神の言葉であり教会の権威でありましたが、Latinで書かれているために
イギリス人には何が書かれているのか知らされていませんでした。

最初にBibleを英訳したのはJohn Wycliffeです。かれはOxford, Merton Collegeで学びました。
英語にしたと言ってもラテン語色を濃く残していました。しかし教会は1382/5/17にこの
英訳Bibleを違法としました。Wycliffeは迫害され1384年に病死しています。
更に1412年にArchbishop of CanterburyはWycliffeの作品をすべて焼却するように追い討ちをかけます。

・・・・・・・・・・・全部で24章あります。

読んでいくとシェイクスピアも出て来ますので御安心を。アメリカに英語が渡って語彙が
増えていった様子。産業革命で語彙が増えた様子。産業革命の財力でインドにイギリス人が行き、
いかに英語がインド社会を制覇したのか、その結果さらに語彙が増えて行きました。
オーストラリアの英語ももちろん出てきます。ここでも語彙は増えています。
英語の語彙を増やすたくましさを知ると、これだけ英語が普及したことにも納得です。

 

 

感想:

この本はとても中身の濃い本です。

1066年にイギリスがノーマン・コンクエストによりフランス人に占領されてから
再び英語が認められる 14世紀まで「英語がどのようだったのか?」という疑問を
ずーっと持っていたのですが、この本が答えてくれました。

「歴史の研究」でトインビーが文明を擬人化して誕生、成長、成熟、衰退、死までの
段階をなぜそうなったかを考察しながら説明していました。このAdventure of Englishは
言語のEnglishを擬人化して、成長してゆく様子を、とくにいじめにあいながら生き延びてゆく
様子が良く描かれています。英語が成長したあとの世界を支配してゆく過程の描写は圧倒的です。

著者はやわらかく書こうとしていますが、内容がやはり専門的です。英語も難しいほうなので、
てこずるとおもいます。
著者は以下のようにWebサイトに紹介されています。
 
The breadth of his intellectual interests is apparent too in his twenty-part history of
Christianity on ITV and, before that, in his incisive contributions to Start
The Week on Radio 4, which he wrote and presented for ten years.
His recent radio series The Routes of English and In Our Time are likewise testimony to his range:
the former is part of a huge BBC millennium project, led by Melvyn Bragg himself,
to chronicle and celebrate a thousand years of spoken English,
and the latter examines ideas and events that have influenced our age.

 

かなり英語の語彙(例えば5000語から1万語以上)を持った人が読むと面白いと思います。
この本が出たからには、大学生で英語の言語学を専攻している学生の必読書でしょうね。

この本を読んだ後で、英語の語彙を大切に扱い、いつくしみながら偉大な英語という財産を
大切に習得して、後輩に伝えてゆきたいという気持ちをあらたに持ちました。

 

玲さんからいただいたコメント

2005/5/31

松澤さんのお勧め、The Adventure of Englishが手元に届きました。
まだ一章しか読んでいないので偉そうにはいえないのですが、とても軽妙な語り口で、
英語の歴史を語ってくれます。それほどアカデミックではなく、overview的ではありますが、
英文学の授業で学ぶような内容よりもさらに視野が広いので、先を読むのが楽しみです。

第一章は、ブリテン島にAngles,Saxons,JutesがOEの元になる言語を持ち込むわけですが、
Augustine以来、 6世紀から7世紀にかけてのキリスト教布教によるLatinとサクソン語の融合、発展の過程が書かれていました。
English Literatureのanthologyを開くと、だいたい一番目に来るBeowulfについても触れられており、
私はこの本でも紹介されているSeamus Heaneyの訳でたまたま読みました。
 今年(日本公開はいつかはちょっと分かりませんが)Beowulf and Grendel という映画が
公開される予定です。脚本の Andrew Rai Berzinsのインタビューを読んでいて興味をひいたのは、
主人公達の会話をなるべくOE語源を中心に構成しているという所でした。ここのところ歴史物(?)
映画がこけにこけているところなので、この映画が日本にきてくれることを祈ります。

The Adventure of Englishを読んでいて、PBを読むとしても、小説とエッセイ、文学とエンターテイメント、
書かれた時代で同じ英語でもこれだけ違うのか、と言うことを感じます。
今、読んでいる物からすれば、やはりエッセイは読みやすいです。私にとって面白いのは
小説の方ですが・・・。小説は作家のスタイルがあるので、ある種慣れるまで時間がかかり、
エッセイは、もちろん書き手の癖はあっても、内容の方に特徴があるので文体はそれほど
慣れなくてもよい事が多いと思いました。200年前のものと現代英語を比べると、
やはり現代の方が遙かに合理化された英語のように思います。今、もう一冊読んでいるものも
アカデミックなものではありますが、現代英語なので知らない単語がそれほどないのが読みやすさにつながります。
これも肌で感じる「多読」の楽しさですね。

 

2005/7/17

他の本に熱中してしまいしばらくお休みしていたthe Adventure of Englishを再び手に取りました。
今のところ三分の一ぐらいでしょうか。本来的には全部読んでから・・・と思っていたのですが、
読んでいるときは「へ〜!」とか「なるほどー」と思っているのに、後になるとすっかり忘れているから、
中間報告です。書けば沢山感想が書けますが、印象に残っていることを少し。
(前にどこまで感想を書いたのかも忘れてしまったので、重なっていたらごめんなさい)

 第二章と第三章ではEnglishのサバイバルの模様が描かれています。ちょうど第二章は先日まで
読んでいた The Last Kingdom時代の英語の環境が書かれています。本を読みながらネットで
Anglo Saxon Chronicleの興味のある部分をちょこちょこと読むのも面白いです。

 9世紀から10世紀にかけては、七王国時代と言われても、ほとんどはDane人の傀儡王国だったので、
この時代に英語はDane人たちが持ち込んだスカンジナビア系言語のの影響を受けています。
著者のBraggさんの生まれ故郷Cumbriaの Wigton方言の紹介もあり興味深く読みました。
King Alfredの時代から次の章は1066のNorman Conquestに話題につなげていきます。
英国史ではなく英語しなので、100年ちょっとを早足で通り過ぎますが、実は歴史的には
この時代も面白い。Hastingsの戦いのバックグラウンドがこの100年にありますし、
Conquest以降のNormanとSaxon関係はその時代に起因している事が多いです。

長くなるのでちょっととばしますが、第6章のChaucerを読んで、Chaucerを読みたくなりました。
MEにも少し興味があって、ちょっと前にSir Thomas MaloryのLe Morte d'Arthur の対訳を
買おうかなと思っていましたが、Chaucerも欲しくなってきました。こういう場合は誰の訳が
いいか迷うところです。Reviewを読んでいて面白かったのは、何十年前に高校でならった・・・
というような書き込みも多く(UKの人のようですが)、その時に暗記させられたものが未だに
忘れられないという人もいます。私は大学時代に暗記したのが、Whan that Aprill with his shoures soote 
The droughte of March hath percede to tha rooteの二行だけですが・・・。
I am always stunned at how beautiful, fluid, and melodic the poetry is,
even if you don't understand the words. という感想に同感します。

第7章から第9章にかけては、英語Bibleの歴史でもあります。非常に興味深い話題なので、
英語上級を目指している方には是非読んで頂きたいと思います。Bibleは音読すると非常に美しく、
音読素材としては最高級品だと常々思っていましたが、この歴史を読むと納得できます。

8章のEnglish and Language of the Stateもかなり面白いです。様々な地方での発音、スペルを
標準化するプロセスが書かれていますが、ここにある単語を全部音読すれば、英語のaccentの
違いが聞き取れるようになるのでは?と思います。私は日本人としてはいろいろなaccentに
接している方だと思いますが、発音できるものは聞き取れる、という法則から言って、
発音を勉強している方にとってもこの章は参考になるような気がしました。

10章はA Rennaissance of Wordsです。ここで私は今まで知らなかったことを知りました。
松澤さんの「語源の扉」第6話でも触れられているラテン語源の英語ですが、
Inkhorn Controversyというphaseがあったことを知りませんでした。
私がSir Walter Scottに苦労したのもInkhorn termが結構多かったせいだということが分かりました。

10章までの感想です。この本を読むときはイタリックで書かれているものは全部音読するようにしています。

 

投稿日 : 2005/10/20(Thu) 19:06
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タイトル The Adventure of English読了

長いこと読んでいるのでいつから読んでいるのかな・・と思ったら5月末からですね。
途中、いろいろと本を読んでしまい、その時々の本に熱中したので、すっかり遅くなってしまいました。
松澤さんが、英文科・英語科の学生は必読と書いておられましたが、私は他の分野の方でも英語を
学ぶ方、また英語を使われる方は読んで欲しい本だと思いました。私が大学の先生ならば、
教養課程でこの本をテキストに講義を持ってもよいと思うぐらいです。
さて、感想というか、要約ですが、長くなります。最初の内のテンションで読むことが
出来なかったので、ちょっと後半いい加減ではありますが、少しでもこの本に手を伸ばして
頂けるチャンスが生まれればと思います。多分、前回10章までのところを書いたので、
11〜24章です。(スペルのミスや日本語のおかしところはお許し下さい)

11. Preparing the Ground
 1604年、Robert Cawdreyによって初めてのEnglish Dictionaryが出来ます。この辺りで、
英語は英国の'国語’としての基礎固めを始めた時代とされます。
そこで、生まれるのが詩を中心とした文学です。Written Englishがその形をしっかり取り始めた頃から、
地方のdialectはInferior な物として、知識層からは嫌われるようになった反面、宮廷英語から
解放される形で民衆パワーとしての英語はStageで花咲くようになります。

12. Shakespeare's English
 Shakespeareを読んだことがない人、あるいは芝居や翻訳では少しは知っているけれど・・・
という人は、Shakespeareを敷居の高い物と思われるかも知れませんが、お上品でも高級でもなく、
コメディーなどはかなり下品な言葉も沢山使っています。Shakespeareの特徴は、
courtly Englishとstreet slang、his own dialect、そして彼自身の造語を新しい言葉として
使いこなしているところです。もしこの時代に「流行語大賞」があれば、Shakespeareが
受賞していることでしょう。ただ、残念な事に、彼のおもしろさは翻訳で知ることは出来ません。
落語を英語で聞くようなもので、Shakespeareに関心がある方は是非、
彼の言語に触れてみて頂きたいと思います。

13. ' My America '
 Mayflower号とともに英語はアメリカの東海岸へと旅立ちます。この時点での英国からの移民は、
Pilgrim fathersと共に大陸に渡ったreligiousな人たちです。このeastcostの人たちの英語を
>The vulgar American speak much better than the vulgar in Great Britain (p166)と
表現されているように、彼らの英語はperfected classical Englishだったようです。
この章を読んでいて、Nathaniel HawthorneのThe Scarlet Letterを思い浮かべました。

14. Wild West Words
 東海岸から西へ西へと英語が拡がっていきます。今度は本格的にAmerican Englishの
基礎が出来るところです。西部劇を思い浮かべて頂ければイメージしやすいと思いますが、
英語はここでnative American (Indian)の語彙も拾って組み入れていきます。
ちょっと話がそれますが、American Heroの原型の一つはCowboyだと私は考えています。
私が子供の頃、RAWHIDEというドラマが流行っていて、男の子たちとじゃんけんで
インディアン役とカウボーイ役を決めて遊んだものです。そのころちょうど父がアメリカに
駐在していたので、アメリカからインディアンのかぶり物(?羽根がついている)送ってきて
くれたときは大喜びをしました。ということは、アメリカの子供たちもカウボーイごっこを
やっていたのでしょうね。

15. Sold Down the River
 英語がミシシッピー川を南へと下っていきます。ここで、英語はアフリカから強制的に
つれてこられた奴隷たちのAfrican tongueと出会います。アフリカと言っても広いので、
彼ら同士で会話する為には共通語が必要です。そこでpidgin form of Englishが
発展することになりました。これが、現在のBlack American Englishの基礎となっています。
18世紀初頭にCharles C. Jones Jr.によってphonetic written speechで書かれた
' Brer Rabbit Story' が紹介されているので、是非、音読しておきたいところです。
もちろんMark Twainも紹介されます。

16. Mastering the Language
 お話は本国に戻ります。1652年にイギリス初めてのcoffee houseがオープンし、
それは a penny universitiesと呼ばれるようになりました。journalismによって、
英語は「一部の人の物」ではなくなった反面、「正しい英語」のcorruptionを危惧する
声があがるようになります。日本では「ガリバー旅行記」で知られるJonathan Swiftが
フランス語、イタリア語のように英語を自国の言語としてascertainするAcademyの
必要性を提案します。Dr, Samuel JohnsonのDictionaryの紹介もありますが、
これが結構独善的な辞書なのでおかしいです。

17. The Proper Way to Talk
 「正しい英語」「正しい発音」「正しい話し方」の教育の話です。
Thomas SheridanがLectures of Elocutionのキャンペーンをします。正しい英語の本家、
本元といえばJane Austenです。先日、バーで飲んでいたら、後ろに座っていたグループの一人が
Jane Austen英語を話す中年女性で(多分50代ぐらいだと思うのですが)、その美しさに思わず
耳を傾けてしまいました。正しいアクセントは出世への道(?)を意味します。
Accent is the snake and the ladder in upstairs downstairs of social ambition(p.235)と
この本では表現されていました。
ところが、一方でWordsworthのようなへそ曲がりがいて、これも面白い。
私はあまり彼の詩を意識して読んだことがないので、これをきっかけに読んでみようかと考えています。

18. Steam, Street and Slang
 産業革命時代の英語の話です。技術革命とともに新しい分野(技術分野)の語彙が増えました。
また、この時代にClassesという意識が生まれるようになりました。CockneyやDickensが紹介されています。

19. Indian Takeover
the East India Company華やかなりし頃からのインド英語の話です。当初、
Traderたちは英語をというよりもインドの現地語を学んでいました。それが政策的にインドの
英語教育へと変遷していくさま、Babu Englishも紹介されます。この章を読んでいて映画
「インドへの道」を思い浮かべました。

20. The West Indies
 Columbusの西インド諸島探検から、ここでも、移民、plantationを経て英語がAfrican tongueと
混じり合います。文法、語法、語彙の一部にAfrican native tongueを残しながら、
西インド諸島のpidgin、creole Englishが生まれていきます。JamaicaのMiss Louによる詩が
素晴らしいのでこれも音読したい素材です。

21. Advance Australia
 1770年にCaptain Cookがオーストラリアを発見してからの移民、そしてオーストラリア英語へと
発展する様子が描かれます。John O'Gradyの詩も面白いです。

22. Warts and All
 英語とracismを取り上げています。インド、西インド諸島、南アフリカ、アフリカ諸国・・・など、
当初英語がnative tongueをinferiorなものと見なしていながら、実は、native languageから大きな
影響を受けはじめる・・・という展開になっています。

23. All over the World
 共通語としての英語が世界中に広まっていくと同時に各地の英語が本家の英語に影響を与えて
いる現実を取り上げます。語彙だけでなく文法までも影響されているとか。
この中でJapanese Englishも紹介されています。ひょっとして日本人が一番「正しい英文法」を知って
いるのではないかと私は考えてしまいました。

24. And Now...?
 23の流れから、Singapore英語Singlishを紹介。これはpidginではなく、立派な
another dialect of Englishではないか、という見方もあります。というこは、Japanese-Englishも
なんら劣等感を持つことなく、英語の方言の一つと考えられるのではないでしょうか?
面白いなと思ったのは、日本では外来語と言いますが、英語の立場からしたらJapanese-Englishが
外来語ということになっていました。コンピュータ時代の英語の激流を紹介します。
コンピュータ用語、ネット用語が新語として増え続ける中で、Text Englishという新しい英語まで
生まれてしまいました。
sh rote GCSE eng as (ab hr smmr hold in NY) in txt spk
確かにこう書かれても判読は出来ますが・・・。2003年のバレンタインデーにUKでは700万件の
' i luv u' が送信されたとか・・・。そのうちloveというスペルは忘れられたりして・・・。
新語については
they seem to be conjured out of air we breathe, just as they are spoken back
into that air carried like pollen on the wind,
と著者は書いています。
さて、英語の未来は・・・?

The Adventure of English by Melvyn Bragg (315ページ)