LOIS LOWRY

2008/6/24

The Giver

Copyright 1993
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おすすめ度★★★★★  (2008/6/23読了.P179)

 

感想


この本は、借りて読みました。
子供から青年に向けた読み物です。タイトルを獲得しているので、良書に間違いないです。
「For the most distinguished contribution to American Literature for Children」

Lowryの作品は初めて読みます。単語の使い方が巧みだと感じました。その結果読みやすいのだけれども考えさせられました。ペーパーバックをこれから読もうとしている人には「Holes」をペーパーバックの前に小手調べとして(トライアルとして)おすすめしていますが、この「The Giver」もペーパーバックを読み始める前の練習として最適な本だと思います。

 描かれている社会は、統制されて人間は存続しますが、何かが足りません。学年が12歳になると、その適正から職業が割り当てられ、それに何の疑問も持たないように喜怒哀楽の記憶がない状態に置かれています。Lowryの巧みな文章で、我々が当たり前に持っている感情が無い人々がたくみに描かれていきます。ことばの使い方の上でも面白い作品です。

Jonasにはだんだんと、喜怒哀楽が与えられ、感じ方が我々に近づいていきます。Jonasは最後にはこの社会を去るのですが、結末が巧みで感心させられます。ネタバレは禁物の本です。

統制された社会の描き方がうまいので、息苦しさを感じるところまで引き込まれます。読み終わって、我々の現実のこの不完全な現状が妙になつかしく感じられます。凄い本だと思いました。

 

物語



 物語の時代は示されていませんが、未来的な雰囲気を感じました。
温室のように、コントロールされた社会で、主人公のJonas青年は12歳のセレモニーを迎えます。
どの家族も、両親と子供2人にコントロールされています。子供は男・女です。両親の子供が必ずしも家族を構成するのではなく、1年間養育の役割を持った Nurturersと呼ばれる家族に育てられたあとで、年に一度の12月のセレモニーにより配分されます。

 喜怒哀楽の記憶が無く、恋愛感情などの記憶も持たない不思議な世界が描かれていきます。
子供達は、年齢により服装が決められていて、所持品も決まっています。自転車が与えられるのは一律X歳のときです。

 The Ceremony of Twelve、つまり12歳のセレモニーが最も重要です。そこで人生の職業がアサインされる(割り当てられる)からです。どのAssignment groupに入れられるかが、11歳から12歳になる子供達の関心ごとです。アサインメントには、Nurturer, Laborer, Fish Hatchery Attendant, Birthmother, Caretaker of the Old, Assistant Director of Recreation, Instructor of Sixes(6歳児)などなどたくさん出てきます。

 12歳になる子供達は、生まれたときから背番号制なので、番号順にThe Chief Elderがアサインメントを読み上げていきます。ところが、Jonasの番は飛ばされてしまいます。不安なJonasに与えられたのは、全員のアサインメントが終わった最後でした。それは「Receiver」だったのです。この世界には、Receiverが一人だけ存在して、次に選ばれたReceiverにトレイニングを与えます。Receiverは最高の名誉職ですが、人々はそれが何であるのかを良く知りません。JonasがReceiverになったために、Jonasにトレイニングを与える老人のReceiverはThe Giverになります。


おすすめ本がまた増えました。嬉しいです。