JONATHAN SAFRAN FOER

2006/7/5

Extremely Loud & Incredibly Close

Copyright 2005
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おすすめ度★★★★☆    (2006/7/3読了, P326)

友人のアメリカ人がわざわざ送ってくれたので、期待しながら読みました。
amazonの書評はすごいですね。すでに日本語もありました。書評をチェックしてから読みました。
たしかに不思議な作風だと思います。


ストーリー:

NYの9/11テロ事件で父親を失った、Oskar Schell という9歳の男の子が主人公です。
父親の遺体が出てこなかったのでしょうか、空のコフィンを埋めに行く葬儀のLimousineを運転しているのがGerald Thompsonです。物語の最後に空のコフィンを掘り出しに行くときにGeraldのLimousineで墓に行きますが、「Geraldって誰?」状態になりました。

 Page16には、5/21/1963年のOskarのGrandpaが登場します。言葉を失い、右手のひらにNo!、左手のひらにYes!と書いて、手書きで人とコミュニケーションを始めます。手書きのコミュニケーションの様子を、1ページのまん中にたった1行の英文という、もったいない手法で数ページが使われます。その後、後半になってGrandadが登場するところにはときどき、このもったいないページが登場します。

OskarのGrandmaはすぐそばのアパートに住んでいます。

 P208からP216までは、文章に赤の手書きで単語が楕円で囲んであります。普通の本ではありえないので、驚きました。
これは「Why I'm not where you are, 4/12/1978」という章です。多いページでは30個ほどの赤丸がついています。ほとんどがピリオドであるべきところがコンマなので、その指摘だと思われますが。

ただし意味が不明で、「なんでココに赤マークがあるのか?」という場所もたくさん有りました。

 OskarはStephen Hawkingに手紙を書きます。そして形式的な返信をもらいます。P304 - 305には、Stephen Hawkingからの返事が届きます。Oskarの5番目の手紙に「What if I never stop inventing?」と書いたことへの反応です。

 父親の死後にOskarが父の部屋にいて、花瓶を割ってしまいます。中から袋に入った鍵が出てきました。袋にはBLACKと書かれています。OskarはBLACKが名前だと思い、NYにいるBlackさんをひとりひとり訪問します。何の鍵?と聞くためです。Blackさんをアルファベット順に訪問します。

この鍵の謎探しが8ヶ月続きます。
結末は面白いと思いました。


感想:
 英単語の使い方が自由でユニークだと思います。9歳の男の子が主人公なので、ユニークな単語の組み合わせで、子供の素直な気持ちを表そうとしたのでしょう。そこのところは、ほぼ成功していて良いと思います。9歳の子にしては頭の良い子供の、9/11で父を失った苦しみがいたるところに出てきます。

 したがって、全体に暗い緊張感のある作品になっています。このテーマでは、最後に癒されることを期待することは無理でしょう。

 才能ある作家で、文章に緊張感を感じました。
ページの記述方法の新しいテクニックもいくつか試みています。


 P269の後半から、P271は文字の変わりに、数字とコンマがずらっと並んでいます。
"6,9,6,2,6,3,4,7,3,5,4,3,2,5,8,6,2,6,という具合です。
これは声が出せないGrandpaが電話で話している内容なので、アメリカの電話の
番号にアルファベットが割り当てられていることから、文章を変換して
相手に伝えようとしているところだと、解釈しました。

たとえば、Hello?の返事が、「4,3,5,5,6」です。H/4, e/3, l/5, l/5. o/6と言うように対応付けるのかな? 作者は本当に文章を書いてから数字に変換したのかもしれませんね。

P47-P49の3ページは、カラーです。マーカーペンのためし書きが全面にあります。文房具屋のペンコーナーのカラーマーカーのためし書きのシートです。Oskarはこのシートに父の名前を見つけます。


 良いとは思いましたが、私の心の深いところまで届いて、大きくうごかすことは無かったので、辛口で星4つにしました。