Jill Bolte Taylor, Ph.D.

2009/4/22

My Stroke of Insight

Copyright 2008
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おすすめ度★★★★★    (2009/4/21)



Jill Bolte Taylorは1996年12月10日にStroke(脳梗塞)で、左脳を損傷し、言語の機能などを失いました。
この本がユニークな点が3つあります。
1、Jillが実は、脳の専門家で、脳の機能を良く知っていた。
2、Strokeが起きた時に、自分の脳が徐々に壊れていくときに何が起きているのかを分析した。
3、左脳の失った機能を8年で復活させた。復活には何が必要なのかをうかがい知ることができる。

12/10の朝に左脳が壊れていく様子が生々しく書かれていて圧巻です。
朝起きた時に、左脳に出血が起きました。血液は徐々に出血したと思われ意識がありながら、
言語機能、記憶力、判断力が失われて行きました。

はやく助けを呼べばよいのにと思いながら読みました。助けを呼ばなければならないのに、それがどういうことなのかが分からなくなっていくのですね。



12月末まで体力を復活させて、手術により脳の血液を除去しました。
それまでの、左脳の機能が最悪にあった時の右脳による知覚が描かれています。
一言で言うと、非常にHappyな状態と、自分とUniverseとの混じった一体感を
感じていたそうです。宗教で言うところの悟りの境地のようなものでしょうか。

  さらにユニークなのは、失った左脳の機能を8年間で、ほぼ完全に復帰させたことです。

脳の図によると、損傷を受けた部分は比較的に小さかったので、回復ができた例だと思われます。
左脳の機能が失われた状態とはどんな世界なのか。右脳は何をしているのか。
どのように左脳が回復していったのか、これらは私にとって新鮮であるとともに、
自分の脳が日常行っているすごいことを、あらためて強烈に認識させられました。

 

自分のいやな性格は左脳で作られていて、左脳では何が起きているのかを知り、ある程度制御できて、性格も変えられることを知りました。左脳の機能が回復するにつれて、怒りの感情のLoopが脳の回路にHookされ始めました。Hookしたときに学習したのは、怒りの感情が起動されたときに、Hookを外すと、90秒で身体の末端に届いたところで消滅することです。怒りの感情を、脳の回路にHookさせたままでいると、怒りをもった嫌な性格が作られていくので、Strokeの後は、その自分の性格の入った記憶のところにはHookしないようにしているそうです。Strokeの前の自分と今の自分は、性格が違う、性格は変えられるということです。

また、英語の学習や習得に対するヒントが私にとって沢山入っていて、今後の
教育する方向付けまでもが整理されました。

 

左脳は言語を扱っているので、Strokeの前には、左脳が右脳に対してStory-Tellerとして、常に話しかけていた。Strokeの後では、言語機能が失われたので、左脳のStory-Tellerが悪い話を語り掛けないので、右脳がのびのびと活動をはじめた。左脳の機能が回復するにつれて、またStory-Tellerになり始めた。しかし、今回は、左脳のStory-Tellerに「だまれ!」ということが出来るようになった。「怒り、恐れ、不安」なとをStory-Tellerが語りかけてくるが、「だまれ!」とコントロールできる。そのことを知ったことが、大きかったと思います。

 

人間の身体の細胞は、数週間から、数か月の寿命ですが、脳細胞の寿命は、自分の銃網と同じだそうです。脳細胞の数は、60億人の世界の人口の166倍あるそうです。 膨大なメモリーをどのように使うのかは、個人個人に任されているのです。怒りや不安のLoopに支配されてしまうか、前向きに建設的なLoopに考えをHookして膨大なメモリーを幸福追求に使うのかは自分次第であることを、メッセージとして受け取りました。

などなど、非常に示唆に富んだ本です。脳に興味がある方、メンタルヘルスに興味がある方は、読んでおいた方が良いでしょうね。

日本語訳は『奇跡の脳』として出版されています。amazonには批判的な書評もありますが、怒りや不安やプライドのLoopに支配されている人が書いているのか、日本語を読むと、そういう感想になるのか、英文で読むのとは違うイメージが湧くのでしょうか・・・。